包囲

包囲（Envelopment）とは

包囲とは、敵の正面ではなく、より脆弱な側面や背後に対して戦力を集中させる攻撃戦術です。これは、敵の戦線全体を攻撃するのではなく、防御が手薄な部分を狙うことで、より効率的に敵を撃破することを目的としています。

包囲の基本

包囲は、正面からの攻撃に比べて危険を伴うものの、成功すれば敵に壊滅的な打撃を与えることができる強力な戦術です。敵の側面に回り込むことで、敵の防御線を突破し、敵を混乱させることができます。

包囲の種類

包囲には、大きく分けて以下の2つの種類があります。

1. 一翼包囲（Single Envelopment）

一翼包囲は、敵の片方の側面に対して行う包囲です。主力部隊が敵の側面に回り込み、支隊が正面から攻撃を仕掛けることで、敵を挟み撃ちにするように攻撃します。この戦術は、敵の側面を突破し、戦線を分断するのに有効です。

一翼包囲の成功例:

レウクトラの戦い: テーバイ軍がスパルタ軍に対して一翼包囲を成功させました。
ロイテンの戦い: プロイセン軍がオーストリア軍に対して一翼包囲を成功させました。
第二次ブルランの戦い: 南北戦争における戦闘で、南軍が北軍に対して一翼包囲を試みました。

2. 両翼包囲（Double Envelopment）

両翼包囲は、敵の両側面に対して行う包囲です。主力部隊が敵の両翼に回り込み、支隊が正面から攻撃を仕掛けることで、敵を完全に包囲します。この戦術は、敵を完全に孤立させ、降伏に追い込むのに有効です。

両翼包囲の成功例:

マラトンの戦い: アテネ軍がペルシア軍に対して両翼包囲を成功させました。
カンナエの戦い: ハンニバル率いるカルタゴ軍がローマ軍に対して両翼包囲を成功させました。
ザマの戦い: ローマ軍がカルタゴ軍に対して両翼包囲を成功させました。
カウペンスの戦い: アメリカ独立戦争で、アメリカ軍がイギリス軍に対して両翼包囲を成功させました。

包囲の注意点

包囲は強力な戦術ですが、成功させるためには以下の点に注意する必要があります。

敵の側面への機動が迅速かつ秘密裏に行われること。
包囲部隊が敵の攻撃を受けないように、十分な戦力が確保されていること。
包囲が完了する前に、敵に反撃の機会を与えないこと。
敵の動きを予測し、柔軟に対応できること。

戦術における包囲の重要性

包囲は、戦術における重要な要素の一つです。敵を包囲することで、敵の戦力を分断し、各個撃破することができます。また、敵の士気を低下させ、降伏に追い込むことも可能です。包囲は、単なる攻撃戦術としてだけでなく、敵を心理的に追い詰める効果も持っています。

包囲と関連する戦術

包囲は、他の戦術と組み合わせて使用されることがあります。例えば、正面攻撃と組み合わせることで、敵の防御線を突破しやすくなります。また、機動戦と組み合わせることで、より迅速に包囲を完了させることができます。

包囲は、歴史的に多くの戦いで使用されてきた、効果的な戦術の一つです。しかし、成功させるためには、入念な計画と実行が必要です。戦術を理解し、適切に活用することで、戦争の勝敗を左右する可能性も秘めています。

参考文献

Bond, P. S., and E. H. Crounch. 1923. Tactics: the practical art of leading troops in war. Annapolis, Md.: New Military Library.
Foertsch, H. 1940. The art of modern warfare. New York: Veritas Press.
U.S. Department of the Army. 1986. Field Manual 100-5: Operations. Washington, D.C.: Department of the Army.

関連項目

戦術
機動
防御
内線および外線作戦

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