名手駅

名手駅：紀の川市の歴史と自然が織りなす駅

和歌山県紀の川市名手市場に位置する名手駅は、西日本旅客鉄道（JR西日本）和歌山線に属する駅です。1901年10月1日、紀和鉄道の笠田駅と粉河駅間に開業しました。開業までには、駅設置場所をめぐる住民と鉄道会社との間で、幾多の議論や交渉が重ねられました。

激動の駅建設：地域住民と鉄道会社の思惑

当初、紀和鉄道は名手谷川東側に駅を設置する計画を立てていました。しかし、名手市場側の住民は、ミカンの産地である地域特性を活かすため、名手谷川西側への設置を強く主張しました。この意見の食い違いにより、計画は一旦見送られました。

その後、名手市場西側への設置を条件に、住民側は駅用地の寄付や建設費用の負担を申し出、ようやく計画が再開されました。しかし、設置場所や手続きをめぐる新たな争いが発生し、村長と助役の間で意見が対立、さらには逓信大臣への陳情まで発展する事態となりました。

こうした紆余曲折を経て、1901年10月1日、現在の名手市場西側に駅が開業。その歴史には、地域住民の強い思いと、鉄道会社との妥協点が凝縮されています。

名手駅の変遷：時代の流れとともに

開業以来、名手駅は地域の重要な交通拠点として機能してきました。1904年には関西鉄道、1907年には国有鉄道となり、1909年には和歌山線の所属となりました。1971年には貨物、1984年には荷物扱いが廃止されました。そして、1987年には国鉄分割民営化により、西日本旅客鉄道の駅となりました。

2020年にはICOCAの利用が可能となり、同年6月1日からは無人駅となりました。また、かつては和歌山方面と五条方面を結ぶ列車において、名手駅で折り返し運転を行う列車が運行されていましたが、1986年3月のダイヤ改正で消滅しています。

駅舎と周辺環境：歴史と現代が調和

名手駅は、相対式2面2線のホームを持つ地上駅です。駅舎は上りホーム側にあり、下りホームへは跨線橋で連絡しています。橋本駅が管理する無人駅で、一部の列車を除き、すべての扉が開くわけではありません。トイレは男女共用の汲み取り式です。

駅周辺には、紀の川市役所那賀支所、青洲の里（春林軒、フラワーヒルミュージアム、華岡青洲顕彰記念公園）、旧名手宿本陣、飯盛山城址、紀の川市立名手小学校、紀陽銀行名手支店、オークワ紀の川名手店などがあります。国道24号も近くを通っており、交通の便も良好です。さらに、地域巡回バスも利用可能です。

名手駅の未来：地域の活性化を支える

名手駅は、歴史と自然に囲まれた、静かで落ち着いた雰囲気の駅です。かつては地域住民と鉄道会社との間で様々な出来事がありましたが、今では、地域住民にとって重要な交通手段として、そして、歴史を語る場所として、その役割を果たしています。これからも、地域の活性化に貢献し続ける存在であり続けるでしょう。

隣の駅

西笠田駅
粉河駅

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