吼えろ!

ラジオドラマ『吼えろ!』の概要

『吼えろ!』は、1962年11月18日に朝日放送（ABCラジオ）で放送されたラジオドラマです。この作品は著名な作家・安部公房が脚本を手がけ、宇野重吉が主演を務めるなど、豪華なキャストとスタッフが揃った一作です。その魅力は、サーカスを舞台にした感動的なストーリーと、深い人間ドラマにあります。

このドラマは昭和37年度の芸術祭賞を受賞し、特に評価されました。また、後にフランスでも放送され、国境を越えた人気を獲得しています。作品の本編は現在、横浜市の放送ライブラリーに所蔵されており、誰でも無料で聴くことができます。さらに、脚本のテキストは1963年4月1日に日本放送作家協会の『放送作家 現代の放送ドラマ I』に掲載されています。

あらすじ

物語の舞台は大和サーカスで、座長は資金繰りの困難さから、一座の看板ライオン・太郎を売る決断をします。太郎は既に右足を失った三本足のライオンで、座長は深い愛情を抱いていました。しかし、レストランの宣伝のためにライオンを買いに来た男は、太郎が吼えない様子を見て軽蔑した態度を取ります。座長はそれに対し激昂し、「ライオンはライオンだ」と彼の存在の意味を主張します。

座長は太郎に最後の華々しい死を与えようと、彼を虎と戦わせる決闘興行を思いつきます。金儲けを絡めた興奮に包まれ、観客は五千人に達し、県の体育館で見世物が行われることになります。ただし、サーカス一座は太郎の死とともに解散する予定でしたが、思いがけず彼の存在が座員たちの運命を左右することになります。

対戦相手の虎・錦丸と対峙した太郎は、なかなか戦う構えを見せません。座長は心の中で太郎への思いを秘めながら、観客にライオンの凄さを示そうと奮起します。しかし、観客の苛立ちが募り、「金を返せ」との声が響き渡ります。観客の暴力的な反応を目の当たりにした座長は、彼らが本当の猛獣であることに気づきます。

最終的に、座長は太郎を助けようとした結果、銃で彼を撃ちます。すると、ライオンの驚異的な咆哮が響き渡り、座長はその瞬間に何を失ったのか深い苦悩に陥ります。彼は「私が殺してしまったのは、いったい、なんだったのだろう?」と、果たして何が死んだのかを自問自答し、その瞬間の意味を探ります。

スタッフとキャスト

このラジオドラマの制作には、安部公房が脚本を担当し、大熊邦也、山内久司、中川隆博の3名が演出を行いました。音楽は芥川也寸志と山本諭が手掛け、制作には須貝正義と阪田寛夫が関わっています。主なキャストには、座長を演じた宇野重吉をはじめ、井川比佐志や佐野浅夫、山岡久乃などが名を連ねました。

まとめ

『吼えろ!』は、サーカスのライオンと座長の愛情、挑戦、そして失われる存在を通じて、深い人間ドラマを描いた作品です。その内容は今尚、多くの人々に感動を与え続けています。

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