呉懿

呉懿（ご い）について

呉懿は、中国後漢末期から三国時代の蜀漢において活動した著名な武将です。彼の名前は『三国志』において呉壱（ご いつ）として言及されており、字は子遠です。出身は兗州陳留郡で、従父の呉匡や族弟の呉班、妹の名は呉氏として知られていますが、彼の子の名前は伝わっていません。孫には呉喬がいます。

若き日

呉懿は幼少期に父親を失い、その後、死んだ父の旧友である劉焉が入蜀する際に、母親や妹、さらに族弟の一家とともに益州に移住しました。劉焉が亡くなると、その子である劉璋に仕官し、次第に昇進して中郎将職に就きました。

劉備との関係

建安17年（212年）、劉備が劉璋を攻撃した際、呉懿は防衛に努めましたが、劉備の攻撃を防ぐことができず、降伏を余儀なくされました。その後、建安19年（214年）に劉備が益州を掌握した際、呉懿は護軍・討逆将軍に任命され、同時に妹の呉氏を妻に迎えました。

建武元年（221年）、劉備が皇帝に即位した時には、偏将軍に任命され、関中の都督の地位にありました。建興6年（228年）の街亭の戦いでは、実戦経験豊かな魏延や呉懿が先鋒に推挙されましたが、諸葛亮は馬謖を選び、大敗を喫する結果となりました。

征戦と昇進

建興8年（230年）、呉懿は魏延と共に羌中に進出し、魏の費曜を撃破し、その功績から左将軍に昇進しました。同年、彼は高陽郷侯の爵位も授けられました。建興9年（231年）には左将軍・荊州刺史としての地位も与えられた上、建興12年（234年）には督漢中・車騎将軍、さらには仮節・雍州刺史に昇進し、済陽県侯に封じられます。

最期の時

呉懿は建興15年（237年）に亡くなり、その死に際しては博愛の精神を持ち、戦功も多くありながら、正史には個人伝が存在しないという異例の存在となりました。彼の存在は歴史の中に埋もれてしまっているものの、その孫である呉喬は後の成漢の李雄に屈服せず、30年間耐え抜くという誇り高い姿を見せています。

評価

呉懿に対する評価は非常に高く、季漢輔臣賛においては「非常に強い意志を持ち、博愛の心を保持した人物」と評価されています。彼は弱軍を率いながらも敵を制圧し、危機的な状況に陥ることはほとんどありませんでした。

三国志演義における呉懿

三国志を基にした作品『三国志演義』では、呉懿は多くの戦闘に参加し、その様子が描かれています。特に第六十二回から第六十四回での彼の動きは重要です。劉璋が劉備に対抗しようとする中、呉懿は戦略の立案に関与し、戦場での果敢な行動が描かれていますが、悲運なことに劉備の軍に降伏することになります。これにより、彼は歴史の表舞台から一時的に姿を消し、最後には反攻を試みますが、結果として劉備に従う道を選ぶことになります。

最後に、呉懿の人生は、その功績や生き様とは裏腹に、幕末の歴史の陰に隠れてしまったものの、彼の存在は決して忘れられるべきではないのです。

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