魏延

魏延（ぎえん）の生涯

魏延は、中国の後漢末期から三国時代にかけての蜀漢の武将であり、劉備の信任を受けて活躍しました。彼の字は文長で、出身は荊州義陽郡です。劉備の配下としてその軍功を重ね、後に重要な役職に抜擢されることになります。

劉備の生前

魏延の活躍が際立ったのは、劉備が蜀に侵入した建安16年（211年）のことです。彼は劉備の配下として随行し、数回の戦功を挙げたことで牙門将軍に昇進しました。建安24年（219年）、劉備が漢中王に即位した際、彼は漢中の守りを任されることになりました。人々は重鎮の張飛がその役に選ばれると思い、魏延の抜擢は予想外のものでした。

彼は劉備に向かい「曹操が攻めてきた際には大王のために防ぎ、もし10万の兵が来るならば、これを蹴散らす所存でございます」と述べ、その勇気で周囲を圧倒しました。この発言に劉備や群臣は感銘を受けたのです。建安16年から建安24年にかけて、彼は次々と昇進し、最終的には鎮北将軍に任じられました。

諸葛亮の北伐時

建興元年（223年）、劉備が崩御し、諸葛亮が丞相として蜀の政治を支配すると、魏延は依然として重用され続けました。建興5年（227年）、彼は諸葛亮の軍の前部督として北伐に参加しましたが、蜀軍は敗北を喫し、彼の戦略に疑問を持つ声も上がりました。

魏延は武勇に優れた将軍であり、その勇敢さから他の将軍たちに避けられる存在となっていました。特に、楊儀との間には激しい衝突があり、軍議の中で剣を突きつけるまでの事態に発展しました。しかし、諸葛亮は両者を同時に罷免することができない立場に苦しみ、その不仲によるストレスを抱えていました。

諸葛亮の死後

建興12年（234年）、諸葛亮が再度北伐に出陣した際、魏延は先鋒として従軍しました。しかし、彼は夢で頭に生えた角に悩まされ、その意味を探し求めることになります。趙直はその夢を良いことだと解釈しましたが、実は不吉な予兆であった可能性が高いとされます。

諸葛亮が病に倒れた際、彼は魏延に敵の追撃を断たせるよう命じ、全軍撤退の指示を暗に残していました。しかし、魏延は自らが指揮官となり北伐を続けることを主張し、楊儀の指揮下に入ることを拒否。彼の行動は次第に問題視され、義理を持たない者同士の争いが生じました。

魏延は最終的に追い詰められ、敵対する楊儀との間で熾烈な戦闘を繰り広げましたが、彼の部下らは勝ち目がないと知って彼を見捨ててしまいます。敗れた魏延は、息子たちとともに逃亡しますが、楊儀に追撃され、最終的には斬首されてしまいました。

評価と伝承

魏延の死後、彼に対する評価は多岐に渡ります。陳寿は彼の行動についての評価において、彼が反乱を目指したのではなく、むしろ自分が正当な後継者になることを望んでいたと指摘しています。江漢の人物である楊戯も彼の武勇を評価しましたが、その性格の問題にも言及しています。

小説『三国志演義』では、魏延がいかにして劉備と出会い、様々な戦いを経て、最期を迎えるのかが描かれています。彼の勇猛さと自身の野心、そして運命に翻弄された様子が物語りの中心となり、彼はただの将軍以上の存在として記憶されています。

魏延の生涯は、蜀漢の歴史の中でも特異なものとして、多くの人々の記憶に残り続けることでしょう。彼の勇敢さや才覚、そして裏切りの悲劇は、今なお多くの人々に語り継がれています。

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