国枝史郎

国枝 史郎（くにえだ しろう）

国枝史郎は1887年に長野県で生まれ、1943年に亡くなった日本の小説家です。彼の作品は主に怪奇、幻想、耽美的な伝奇小説に焦点を当てており、他にも探偵小説や戯曲の執筆も行いました。彼の代表作としては、『蔦葛木曽桟』や『八ヶ嶽の魔神』『神州纐纈城』が挙げられます。

経歴

国枝は長野県諏訪郡宮川村に生まれました。父親が県庁や郡役所で勤務していた影響で、彼は小学校を転々としながら学びました。後に旧制長野中学へ進学するも、厳格な雰囲気の中で剣道に情熱を注いでいましたが、暴力的な行動が原因で放校処分を受け、兄の助けを借りて東京に移住しました。

その後、郁文館中学校に入学し、1908年に卒業。海軍兵学校に挑戦するも失敗し、早稲田大学の英文科に進学しました。この頃から詩や演劇の制作に関わり始め、小川未明が主宰する青鳥会にも参加しました。1910年、自費出版した戯曲集『レモンの花の咲く丘へ』で高い評価を得、自身の作家としての道を築いていきます。

1914年、彼は大学を中退して大阪朝日新聞社に入り、新聞記者としてのキャリアをスタート。松竹座に専属脚本家として参加し、その後も多数の戯曲を発表しましたが、1920年にはバセドウ病を患い、松竹座を退職。その後茅野に戻り、地方での文学活動を開始しました。

1922年から1926年にかけて『講談雑誌』に連載された『蔦葛木曽桟』により一躍人気作家となります。1923年には探偵小説『砂漠の古都』の翻訳を発表し、さらなる名声を獲得。結婚後も執筆活動を続け、様々なペンネームを用いて作品を発表しました。1927年には、「耽奇社」を結成し、今後も多くの作品を発表しました。

彼の作品は時に現代小説とも交わり、1935年以降は執筆活動が減少しますが、その後も生活のために様々な仕事に従事しました。1943年、彼は喉頭癌により亡くなり、その名は長野の宗湖寺に葬られました。

再評価と影響

国枝の作品は1968年に復刊された『神州纐纈城』により再評価され、特に三島由紀夫からその文才や幻想的な表現力について高く評価されました。彼の作品は後の作家たちに影響を与え、特に怪奇幻想ジャンルの礎を築いたと言えます。彼の後には小栗虫太郎や江戸川乱歩など、同じテーマを持つ作家たちが現れ、国枝のスタイルが受け継がれることとなりました。

主な作品

国枝史郎の三大傑作は以下の通りです。

• - 『蔦葛木曽桟』 (1922-26年連載)
• - 『八ヶ嶽の魔神』 (1924-26年連載)
• - 『神州纐纈城』 (1925-26年連載、未完)

彼は多様な作風で作品を発表し、特に耽美的な要素や幻想的な描写によって、文学界に大きな足跡を残しました。国枝の作品を通じて、彼は日本文学の可能性を広げ、多くの後輩作家に影響を与え続けています。

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