地獄温泉

地獄温泉

熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽に位置する地獄温泉は、その名の通り、温泉の裏山に広がる火山ガス噴出による草木が生えない地獄地帯に由来します。阿蘇五岳の一つである烏帽子岳の西南中腹、標高750mの山中にあり、自然豊かな環境が魅力です。

温泉概要

泉質は単純酸性硫黄泉（硫化水素型硫黄泉）で、泉温は60℃から100℃と高温です。神経痛、病後回復、筋肉痛、関節痛、五十肩、打ち身、くじき、冷え症などに効果があると言われていますが、その効果は万人に保証されるものではありません。

温泉街

現在、地獄温泉には「青風荘」という一軒の旅館のみが存在します。隣接する垂玉温泉瀧日和も近い場所にありますが、源泉が異なるため別の温泉として扱われています。かつては国民宿舎「南阿蘇」や「柴田旅館」も存在しましたが、それぞれ閉館しています。「柴田旅館」は内湯を持たず、隣接する「清風荘」の湯を利用する形態の湯治宿でした。

清風荘の浴場

唯一の旅館である「清風荘」（青風荘と表記される場合もあります）は、木造校舎を思わせる巨大な建物で、複数の浴場があり湯めぐりを楽しめます。源泉は裏山の地獄地帯から引いていますが、露天風呂の「すずめの湯」だけは湯船の底から源泉が湧き出しています。

2016年の熊本地震で多くの建物が被災しましたが、その後改修され、一部の浴場は再建されました。

被災前の浴場

内湯
元湯: 男女別の大浴場。素朴な造りでした。
家族風呂: 貸切浴場。小規模ながら源泉掛け流しで、2つありました。
露天風呂
すずめの湯: 屋根付き混浴露天風呂。濁り湯で、ぬるめの湯と熱めの湯がありました。豊富なミネラルを含み、特に底に沈殿する泥に美肌効果があると言われていました。女性専用の時間帯も設けられていました。
新湯: 屋根付き男女別露天風呂。以前は別源泉で湯の花が多かったですが、現在は元湯と同じ湯になっています。以前は自由に利用できましたが、被災前は宿泊者専用の有料貸切浴場でした。
仇討ちの湯: 女性専用露天風呂。男性専用露天岩風呂を見下ろすように作られていました。
露天岩風呂: 男性専用露天風呂。四季折々の景色を楽しめました。

被災後の浴場

内湯
たまごの湯: 仇討ちの湯の跡地に建てられた大浴場。内湯と露天風呂を併設しています。
元の湯: 旧元湯の浴槽に使われていた石を使用した大浴場です。
露天風呂
すずめの湯: 湯浴み着着用が必須となりました。
たまごの湯: 男女別。

歴史

江戸時代、地獄温泉は熊本細川藩の藩士のみが入浴を許された格式高い湯治場でした。入浴する藩士には帯刀が義務付けられるなど、厳しい掟がありました。清風荘の本館玄関には、当時の掟書（1808年執筆）が展示されています。

1998年の台風7号では、清風荘の本館は大きな被害を受けなかったものの、別館の屋根が損壊し、翌年に改築されました。

2002年のFIFAワールドカップ日韓大会では、熊本市でキャンプを行っていたベルギー代表チームが当温泉に入浴しました。

2016年の熊本地震では、建物自体に大きな被害はなかったものの、温泉に通じる阿蘇大橋が崩落し通行不能となったため、宿泊客や関係者は自衛隊のヘリコプターで救出されました。その後、旅館は閉鎖されましたが、同年6月の大規模な土砂災害により多くの建物が被害を受けました。本館玄関部分以外は全面的に改築・改装され、2019年4月に「すずめの湯」が日帰り温泉として再開しました。2020年9月18日には宿泊も再開しました。

湯治場

明治以降、一般庶民に開放された地獄温泉は、庶民の湯治場として発展しました。現在も清風荘には、一般旅館部とは別に、安価で素泊まり宿泊できる自炊設備を備えた簡素な部屋があります。近年まで旅館敷地内には湯治客のための売店がありましたが、経営者の高齢化により廃業し、現在は自動販売機コーナーとなっています。また、テレビなどで紹介されたことで一般観光客が増加したため、一般客室を増やすとともに、湯治客用の部屋は減少しました。熊本地震でほぼ全面的に改築されましたが、湯治部は「曲水舎」として存続しています。

アクセス

南阿蘇鉄道高森線長陽駅から予約制の宿泊者専用無料送迎バスまたはタクシーで約15分。
同線阿蘇下田城駅から乗合タクシー（要予約：400円/人）で約15分。（※現在休止中）
路線バスは2011年に廃止されました。
九州自動車道熊本インターチェンジから約30km。

外部リンク

地獄温泉清風荘公式ページ

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