掛け流し

掛け流し温泉とは？

掛け流しとは、温泉を浴槽に注ぎ込み、溢れたお湯をそのまま排水する給湯方法です。源泉から自然に湧き出る温泉、掘削によって自噴する温泉、あるいは動力で汲み上げた温泉を、循環させることなく浴槽に直接供給します。古くからある温泉の利用方法ですが、近年、その価値が見直されています。

掛け流しの歴史と背景

古来より、自然湧出や掘削自噴による温泉利用は、基本的に掛け流しでした。しかし、循環風呂の普及後も、掛け流しは特段注目されていませんでした。

転機となったのは、2000年～2002年のレジオネラ菌騒動です。循環風呂でのレジオネラ菌による死亡事故を受け、菌の繁殖を防ぐ掛け流しが注目を集めるようになりました。温泉愛好家の間では、掛け流しは温泉を選ぶ上での重要な要素となりました。

2004年の温泉偽装問題も、掛け流しへの関心を高めました。多くの施設が「源泉掛け流し」を謳い文句に使用するようになり、マンションの浴室にまで掛け流しを採用する例が見られるようになりました。

しかし、2023年には、ある掛け流し温泉で基準値の約3700倍ものレジオネラ属菌が検出される事例が発生しました。これは、適切な湯の入れ替えや塩素注入が行われていなかったことが原因でした。この事例は、湯量が豊富であってもレジオネラ菌の繁殖を防げないことを示唆しています。

なお、「掛け流し」という表現は、松田忠徳氏が自身の著書で初めて使用したと主張されています。「源泉掛け流し」という語は、野口悦男氏が考案したという説もあります。

掛け流しの特徴と効能

掛け流しのお湯は、空気に触れる前の新鮮な状態であることが多いです。そのため、源泉本来の色、香り、感触を味わうことができ、湯の花が浮遊していることもあります。また、消毒剤を使用していないことが多いため、独特の香りや感触を楽しむことができます。これらの特徴から、掛け流しは、温泉施設を選ぶ際の重要な判断材料となっています。

ただし、掛け流し方式が循環方式よりも健康に効果的であるという科学的な証明はまだありません。「リウマチに効く」といった泉質別の効果についても、医学的な議論が残されています。

掛け流しの判別方法

基本的には、浴槽から溢れるお湯と、同量のお湯が源泉から供給されている状態が掛け流しです。お湯の色、香り、湯の花の有無なども判断材料となりますが、無色透明無味無臭の温泉もありますので、必ずしも正確ではありません。

湯口からの湯量と、浴槽から溢れる湯量のバランスを見るのが最も確実です。湯口から大量のお湯が出ているのに、溢れる湯が少ない場合は、循環装置を使用している可能性が高いです。

2005年の温泉法施行規則改正により、温泉分析書への加水、加温、循環・ろ過装置の使用、入浴剤や消毒剤の使用の有無の明記が義務付けられました。これらと浴槽の状態から、掛け流しかどうかを判断できます。日本温泉協会の天然温泉表示看板にも、同様の情報が記載されています。これらの措置は、2000年代初頭の温泉偽装問題を受けて行われたものです。

まとめ

掛け流しは、温泉の楽しみ方の一つであり、その価値は近年ますます高まっています。しかし、レジオネラ菌の問題など、安全面にも配慮する必要があります。温泉施設を選ぶ際には、これらの情報を参考に、自分にとって最適な温泉を選びましょう。

もう一度検索