大集経

『大集経』の概要

『大集経』（だいじっきょう、または『大方等大集経』）は、中期大乗仏教の経典のひとつで、サンスクリット語の「Mahāsaṃnipāta-sūtra」にあたります。チベット語では「'dus pa chen po」と呼ばれています。この経典は、釈迦が十方の仏菩薩を集めて大乗の教えを説く内容となっており、特に空思想と密教的要素が豊かに表れています。

原語の意味は、「大」（mahā）、「集合」（saṃnipāta）、「経」（sūtra）で構成されており、トータルで「集合させた大きな経」という解釈が可能です。隋の時代に、僧就が訳したものは、北涼の曇無讖の訳した二十九巻の大集経に、さらに隋の那連提耶舎が訳した『月蔵経』や『日蔵経』を加えたことで、合計六十巻の経典となりました。

中国仏教においては、『般若経』『華厳経』『涅槃経』『大宝積経』と共に大乗仏教の五部経に数えられ、大蔵経の編纂にも大きな影響を与えています。

内容の構成

『大集経』は全体が十七の部分に分かれ、それぞれの巻には独自の教えが含まれています。以下にその内容を紹介します。

• - 瓔珞品（第1巻前半）: 釈迦が成道後十六年、菩薩や魔王のために無礙の法門を説きます。
• - 陀羅尼自在王菩薩品（第1巻後半～第4巻）: 仏が陀羅尼自在王菩薩に対し、戒や定、慧を通じた修行の法を教えます。
• - 宝女品（第5、6巻）: 宝女童女が成し遂げた三十二の宝心を詳述します。
• - 不眴菩薩品（第7巻）: 不眴菩薩に向けた八つの陀羅尼門、精進、法、荘厳、発心について説きます。
• - 海慧菩薩品（第8～11巻）: 海慧菩薩に対し、浄印三昧や仏法、大乗の意義を示します。
• - 無言菩薩品（第12巻）: 無言菩薩が無言、無声、空の法性を語ります。
• - 不可説菩薩品（第13巻）: 発無上菩提心や増長菩提心についての教えが展開されます。
• - 虚空蔵菩薩品（第14～18巻）: 六波羅蜜などの菩薩の徳について教えます。
• - 宝幢分（第19～21巻）: 魔苦や三昧神足品などの詳細な教えが盛り込まれています。
• - おおよその集まりが続く中、
• - 日密分（第31～33巻）: 護法についての法が記されています。
• - 日蔵分（第34～45巻）: 第六の部分には菩薩の使い、定品、護持に関する教えが含まれます。
• - 月蔵分（第46～56巻）: 様々な魔王たちに関する教えが詳述されています。
• - 須弥蔵分（第57、58巻）: 声聞に関する詳細が述べられています。
• - 十方菩薩分（第59、60巻）: 罪の相についての論述がなされています。

また、『大集経』の中には、女が男に生まれ変わる思想や、仏滅後の時代を区切る五五百歳の思想なども含まれ、多様な教義が展開されています。

別行本と資料

『大集経』は、翻訳の歴史が織りなされた複雑な経典でもあります。前述の巻のいくつかは北涼の曇無讖、あるいは智厳宝雲などによって翻訳され、別行本として様々に流通しました。このように、重要な経典としての役割を果たし続けています。

結論

『大集経』は、その内容が豊富で多岐にわたり、中期大乗仏教の信仰や実践において重要な位置を占めています。仏教の教義や哲学を探求する上で、欠かせない経典でしょう。

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