天丼

天丼：日本の国民食としての歴史と魅力

天丼は、熱々のご飯の上にサクサクの天ぷらがのった、日本を代表する丼料理です。その歴史は古く、江戸時代後期に生まれたとされており、庶民から広く親しまれてきました。天ぷら丼の略称として誕生しましたが、現在では「天丼」として定着しています。

天丼の歴史：諸説ある起源と庶民への浸透

天丼の起源については、諸説あります。江戸時代末期、新橋の蕎麦屋台（1831年創業）や、浅草雷門の天ぷら屋「三定」（1837年創業）が起源とする説、明治8年（1875年）頃に神田鍛冶町の「仲野」で発明されたとする説などがあります。いずれにせよ、天丼は古くから日本の食文化に根付いていることが伺えます。

明治20年には3銭、大正8年には25銭、昭和12年には40銭程度と、庶民にとって手の届きやすい価格であったことから、東京を中心に広く普及しました。手軽に食べられることから、現代で言うところの「ファストフード」として親しまれてきたと言えるでしょう。

天丼の調理法：伝統とバリエーション

伝統的な江戸前天丼は、揚げたて熱々の天ぷらを甘辛い丼つゆにくぐらせてご飯にのせるのが特徴です。しかし、全国的には天ぷらを乗せてからつゆをかけるスタイルが一般的です。地域や店によって調理法は様々で、揚げ置きの天ぷらを使用したり、塩だれやごま塩で味付けしたりするなど、バリエーションも豊富です。

丼つゆは、醤油、みりん、砂糖などを煮詰めて作った濃いめのものが一般的ですが、中には天ぷらが真っ黒になるほど濃い「黒天丼」など、個性的なものもあります。また、天ぷらの衣の食感にもこだわりがあり、揚げたての食感を大切にする店もあれば、しんなりとした食感にする店もあります。

天丼の種類：定番からご当地グルメまで

基本的にはご飯の上に天ぷらがのっていれば天丼と呼びますが、メニューに「天丼」と記載されている場合、海老、イカ、キスなどの魚介類の天ぷらが中心で、小海老のかき揚げや季節の野菜天が添えられていることが多いです。蕎麦屋では、大きめの海老が2本という昔ながらのスタイルも存在します。

「上天丼」は、海老や穴子など、より高級な天ぷらがのった豪華な天丼です。また、天ぷら専門店では、「海老天丼」「穴子天丼」「イカ天丼」といった種類があり、「お好み天丼」で好きな天ぷらを選ぶことも可能です。

さらに、地域によっては、地元の食材を使ったご当地グルメとして独自の天丼が提供されている場合もあります。

天丼のバリエーション

精進天丼（野菜天丼）： 野菜の天ぷらのみを使用した天丼
かき揚げ丼： 大きなかき揚げをひとつだけ載せた天丼
たぬき丼： 揚げ玉を載せた丼。卵とじにする場合もある。東京では小さなイカ、海老を団扇状に揚げて天丼にしたものもこう呼ぶ。
天玉丼（天とじ丼）： 天ぷらを甘辛い割下で煮て卵でとじたもの
みそ天丼： 味噌ベースのたれをかけた天丼（中部地方の一部）
塩天丼： 塩味のたれ、またはごま塩などをかけた天丼

天丼にまつわる雑学：言葉遊びと最後の晩餐

漫才やコントの世界では、「天丼」という言葉は、同じことを繰り返すギャグのことを指します。これは、蕎麦屋の天丼に必ず海老が2本入っていたことに由来すると言われています。

また、死刑執行前日の食事として、天丼を注文する死刑囚がいたという話もあります。「天国へ行く」という縁起担ぎの意味合いがあったと考えられています。

まとめ：天丼の魅力

天丼は、その歴史、調理法、種類、そして言葉遊びなど、多様な側面を持つ料理です。手軽に食べられることから、日本の食文化に深く根付いており、これからも多くの人々に愛され続けるでしょう。様々なバリエーションがあるので、お気に入りの天丼を見つけてみてください。

関連項目

信州諏訪みそ天丼（長野県諏訪市）
天売ガヤ天丼（北海道天売島）

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