天田愚庵

天田愚庵：禅僧、歌人、そして清水次郎長の伝記作家

天田愚庵（あまだ ぐあん）は、嘉永7年（1854年）に生まれ、明治37年（1904年）に没した禅僧であり、歌人です。本名を天田五郎といい、一時山本五郎（山本鉄眉）と名乗っていました。激動の時代を背景に、多様な顔を持つ人物として知られています。

生い立ちと戊辰戦争

愚庵は、磐城平藩士の家に生まれました。戊辰戦争では、兄の出陣や家族との離散を経験。戦火の中、仙台への避難を余儀なくされます。その後、藩校で学び、猪瀬伝一や伊藤祐之といった生涯の友人を得ました。

上京と多様な経験

明治4年（1871年）に上京し、ニコライ神学校に入るも中退。小池詳敬の食客となり、山岡鉄舟の門下で武道を、落合直亮のもとで国学を学びました。西国巡遊中には佐賀の乱に巻き込まれ投獄されるなど、波瀾万丈な日々を送ります。獄中では歌人の丸山作楽と出会い、短歌と国学を学びました。桐野利秋のもとに身を寄せたこともありました。

清水次郎長の養子、そして『東海遊侠伝』

山岡鉄舟の勧めで、侠客・清水次郎長の養子となり、山本五郎と名乗ります。次郎長の事業を手伝う傍ら、その生涯を記した『東海遊侠伝』を出版。この作品は次郎長の名を全国に広めるきっかけとなりました。その後、養子を辞し、旧姓に戻ります。

禅僧としての晩年

有栖川宮への奉職、大阪内外新報社への入社を経て、京都林丘寺で滴水禅師に師事し、禅僧となります。愚庵と号し、京都に庵を結びました。西国巡礼の様子は『巡礼日記』に綴られています。正岡子規との交流もあり、互いの才能を認め合いました。

死と遺産

晩年は病に伏し、明治37年（1904年）に51歳で死去。辞世の歌を残しました。墓は京都市の鹿王院にあります。愚庵の著作は、没後『愚庵全集』としてまとめられました。

人となり

愚庵は、型破りな人物だったようです。仙台藩士を敵と間違える、女狐の占いを信じてしまう、といったエピソードが残っています。

著作

東海遊侠伝: 清水次郎長の生涯を描いた伝記。愚庵の代表作です。
巡礼日記: 西国巡礼の記録。当時の社会情勢や愚庵の心情が伝わってきます。
* 愚庵全集: 愚庵の没後に出版された全集。歌、漢詩、日記などが収録されています。

天田愚庵は、激動の時代を生き、禅僧、歌人、伝記作家として多彩な才能を発揮しました。その生涯は、現代においても多くの人々に感銘を与え続けています。

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