太陽の城

太陽の城：岡崎市の文化と児童教育を支えた場所

「太陽の城」は、愛知県岡崎市明大寺本町に1979年から2012年まで存在した、公共の文化施設であり児童館でした。正式名称は「岡崎市青少年・児童センター 太陽の城」とされ、市民の芸術文化活動と児童の校外指導の拠点として重要な役割を担いました。

施設概要

太陽の城は、鉄筋コンクリート5階建てで、延べ面積は1,972平方メートルでした。その外観は、ヨーロッパの古城を思わせるデザインで、当時としては非常に画期的なものでした。特に目を引いたのは、北側にそびえ立つ高さ約30メートルのシンボルタワーで、ウェストミンスター宮殿のビッグ・ベンを模したチャイム付き時計が設置されていました。

施設内は、年齢層に応じた様々な機能を備えていました。1階は主に幼児から小学校3年生までを対象とした児童センターで、図書室、集会室、学習室、保健室、遊戯室などが設けられていました。体力づくりのための専門指導員も配置され、開館後にはプレイルームも整備されました。図書室には、2010年時点で約1万2,500冊の児童向け図書が所蔵されていました。

2階以上は青少年センターとして利用され、2階には音楽ライブラリー兼図書室、視聴覚室兼集会室、研修室兼体育室がありました。3階から4階は吹き抜けのステージ付きミュージックホール兼体育室となっており、300人収容のミュージックホールは、市民が騒音を気にせずに演奏会や練習を行える場所として重宝されました。4階には音響、照明、映写関係の調整室が、5階には音楽練習室兼研修室が設けられていました。また、1986年から1996年までは、岡崎市視聴覚ライブラリーも入っていました。

太陽の城は、2010年度には13万3,200人もの利用者が訪れるなど、広く市民に利用されていましたが、一方で施設の使いづらさも指摘されていました。例えば、ミュージックホールには舞台裏や楽屋がなく、出演者は廊下で待機する必要があったり、バレエ練習用に設計された部屋では松ヤニの使用が禁止されていたため、実際には練習に利用できないといった問題点がありました。

歴史

太陽の城の歴史は、1966年に明代公園が完成したことに始まります。その後、公園内に2階建ての児童館が建設されましたが、1979年の国際児童年を記念して、明代公園の東側に現在の太陽の城が建設されました。総工費は5億1,300万円で、同年5月1日に開館しました。

3階ロビーには、二科会会員の画家、鈴木幸生による「あすなろの希」と題する巨大な壁画が飾られました。しかし、壁画には当時の市長や教育長、文化協会長に酷似した人物の肖像が描かれていたため、完成当初から物議を醸しました。さらに、壁画の制作費が高額であったことも批判の対象となり、市議会でも問題視されました。

その後、1980年に、作者の鈴木幸生自身が人物の部分を塗りつぶし、新たに内田市長らしき人物と、その息子である康宏氏を思わせる人物を描き加えました。この行為は、当時の政治的な状況と関連づけられ、さらなる議論を呼びました。内田市長が公職選挙法違反で逮捕され辞職したことも、この問題を複雑化させました。

閉館とその後

2010年、岡崎市は「アイプラザ」を譲り受け、2011年に「岡崎市総合学習センター」として再整備しました。これを受けて、当時の柴田紘一市長は、太陽の城を廃止し、その跡地にコンベンション機能を有するホテルなどを誘致する意向を示しました。これに対し、市内唯一の児童館がなくなるとして野党議員から反対の声が上がりましたが、最終的に廃止条例案は可決されました。2012年3月31日、太陽の城は閉館し、その後解体工事が行われました。

閉館後、太陽の城の跡地利用については様々な議論が重ねられました。当初は、コンベンション施設とホテルの建設が計画されましたが、市長選挙の結果や建設資材の高騰、コロナ禍によるコンベンション需要の落ち込みなどを理由に計画は中止となりました。その後、市民からの意見聴取を経て、跡地には市民の交流スペースを備えた新たな施設の建設が検討されることになりました。最終的には「（仮称）おかざき乙川リバーフロント交流拠点」として、アスレチックやボルダリング、全天候型芝生広場などを備えた施設が計画されています。

太陽の城は、そのユニークな外観と市民に親しまれた歴史から、岡崎市にとって特別な存在でした。閉館後の跡地利用を巡る議論は、今後の岡崎市のまちづくりを考える上で重要な教訓となるでしょう。

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