学校法人甲南学園

学校法人甲南学園は、兵庫県神戸市に拠点を置く日本の私立学校を運営する法人です。

創立の背景と初期の歩み

学園の歴史は、明治末期に遡ります。当時、兵庫県武庫郡住吉村（現在の神戸市東灘区住吉）には、多くの関西財界人が邸宅を構えていました。この地域に質の高い教育機関が必要であるとの認識から、1910年（明治43年）、田邉貞吉、才賀藤吉、平生釟三郎、阿部元太郎、小林山郷ら11名の財界人の間で、私立の幼稚園と小学校を設立する計画が持ち上がりました。彼らの尽力により、翌1911年には甲南幼稚園、1912年（明治45年）には甲南小学校が設立されます。

しかし、これらの学校は設立間もなく財政的な困難に直面しました。この危機を乗り越えるため、平生釟三郎は久原房之助や進藤嘉三郎らから財政支援を取り付け、学校の存続を図りました。

旧制学校の設立と「学園」へ

平生釟三郎は、幼稚園・小学校に加え、さらに高等教育機関の設立を目指しました。安宅弥吉や伊藤忠兵衛（二代目）らの協力もあり、1918年（大正7年）12月には「財団法人甲南学園私立甲南中学校」の設立が認可され、翌1919年（大正8年）には旧制甲南中学校が開校します。同学園では、この旧制中学校の開校をもって学園の創立としています。

平生は、この甲南中学校を基礎に、7年制の高等学校、さらには大学へと発展させるという壮大な教育構想を抱いていました。しかし、1920年に発生した戦後恐慌により、主要な資金源であった久原房之助氏が破産するなど、学園も資金難に見舞われます。平生自身や協力者の伊藤忠兵衛も経営危機に瀕しました。それでも平生は、岩崎久弥や野村徳七ら新たな支援者を募るなどして、この困難を乗り越え、高等教育機関設立の道を模索し続けました。

1923年1月、財団法人は「財団法人甲南学園」と改称。同年4月には、旧制甲南中学校を母体とする7年制の旧制甲南高等学校が開校しました。しかし、旧制甲南高校も開校当初から財政的な苦境が続き、こうした状況から、平生が当初描いた「東洋一の大学」設立の構想は、実現に至らないままとなります。

戦後の学制改革と新制大学の開学

戦後、学園は創立者である平生釟三郎氏の死去（1945年11月）という大きな節目を迎えます。そして、戦後の学制改革のもと、教育体制の再編が進められました。旧制甲南高校を母体として、1947年（昭和22年）4月には新制甲南中学校が、1948年（昭和23年）4月には新制甲南高等学校がそれぞれ開校。経営母体である甲南学園も、1950年（昭和25年）12月には財団法人から学校法人へと改組されました。そして、1951年（昭和26年）4月、ついに新制の甲南大学が開学し、平生の長年の構想の一部が実現する形となりました。

その後、学園は教育環境の充実に努め、1953年には学園歌を制定、1957年には学園史資料室を設置するなど歴史の継承にも力を入れました。また、1974年には平生邸跡地に同窓会館「甲南学園平生記念館」が竣工しています。国際交流にも積極的に取り組み、1976年には甲南・イリノイセンターを開設しました。一時期、姉妹校としてフランス甲南学園トゥレーヌが1991年（平成3年）に開校しましたが、2013年（平成25年）に閉校しています。

現在の設置校

甲南大学
甲南中学校・高等学校

かつては旧制甲南高等学校やフランス甲南学園トゥレーヌなども設置していました。

沿革概要

1910年：幼稚園・小学校設立計画が持ち上がる。
1911年：甲南幼稚園創立。
1912年：甲南尋常小学校創立。
1918年12月：財団法人甲南学園私立甲南中学校設立認可。
1919年4月：旧制甲南中学校開校（学園創立）。
1923年1月：財団法人甲南学園に改称。
1923年4月：旧制甲南高等学校開校。
1947年4月：新制甲南中学校開校。
1948年4月：新制甲南高等学校開校。
1950年12月：学校法人甲南学園へ改組。
1951年4月：新制甲南大学開学。
1991年4月：フランス甲南学園トゥレーヌ開校。
* 2013年7月：フランス甲南学園トゥレーヌ閉校。

学校法人甲南学園は、創立以来、「人物育成」を教育理念の中心に据え、阪神間モダニズム文化とも関連の深い神戸の地で、社会に貢献する人材の育成を続けています。

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