宝生如来

宝生如来（ほうしょうにょらい）

宝生如来は、大乗仏教における重要な如来の一尊であり、特にその教えが大切にされています。この如来の名は、梵語の「रत्नसम्भव」（ratnasambhava）に由来し、意訳すると「宝から生まれたもの」という意味が含まれています。宝生如来は、仏教の密教における金剛界五仏の一人であり、その位置は金剛界曼荼羅の中で大日如来の南に配置されています。これは、宝生如来が持つ象徴的な意味と、他の仏との相互関係を示します。

仏教哲学の中でも特に唯識思想において、宝生如来は「平等性智」という悟りの象徴とされています。この概念は、全ての存在が平等に価値を有しているという教義を反映しており、これは大乗仏教の根幹となる考え方の一つです。すなわち、すべての生きとし生けるものはそれぞれ固有の価値を持ち、尊重されるべき存在であると教えています。

宝生如来の印相は、その特徴的な姿勢からも多くの教えを読み取ることができます。左手は腹の前で衣を掴み、右手は前方に向けて下げる「与願印」を結んでいます。この印相は、他者への願いを捧げる意志や、願いの実現を示すものであり、信者にとって非常に重要な象徴となっています。

日本においては、宝生如来の彫像はしばしば五仏の一として扱われ、そのため単独の像として存在するケースは少なくなっています。しかし、藤次寺にある本尊像は、宝生如来が独立して祀られている珍しい例とされています。これによって、特にこの寺院を訪れる信者たちが、特別な信仰を寄せていることがわかります。

また、宝生如来の真言「オン・アラタンノウ サンバンバ・タラク」（oṃ ratnasambhava trāḥ）は、信者によって繰り返し唱えられ、その教えを深める手助けとなります。この真言は、如来の存在に結びつく言葉であり、信者が宝生如来の加護を得るために用いる重要な呪文です。

宝生如来は、仏教の思想や信仰の中で特に「平等性智」を体現する存在であり、多くの信者にとって、心の支えとなる重要な如来です。彼の教えは、全ての存在の価値を認め、共に生きる意味を改めて考えさせてくれるものです。

もう一度検索