審議拒否

審議拒否とは

審議拒否とは、特定の政党またはその所属議員が、委員会を含む議会での審議への参加を拒む行為を指します。これは審議放棄とも呼ばれ、主に野党が与党に対抗するための議事妨害戦術として用いられてきました。

日本における審議拒否の歴史

黎明期：物理的抵抗から審議拒否へ

1960年代まで、日本の国会では与党である自民党が圧倒的な多数を占めていました。そのため、野党は政策決定に影響力を持つ手段として、議場占拠などの物理的な審議妨害を行っていました。しかし、安保闘争時の混乱などにより「乱闘国会」と批判され、国民の国会への不信感が高まりました。その結果、与野党間で、野党は議場占拠などの物理的抵抗を行わず、自民党は単独審議や単独採決を行わないという申し合わせがなされました。1970年代以降、野党は物理的な抵抗の代わりに、審議拒否を主要な対抗手段として用いるようになりました。

近年：与党による審議拒否も

1993年の細川内閣における佐川急便からの借入金問題や、2009年から2012年の自民党が野党であった時代には、自民党自身が審議拒否を行った事例もあります。

野党が審議拒否を行うと、「国会を空転させている」「国民不在だ」といった批判が起こります。一方で、与党が審議拒否中に審議を進めると、「強行採決だ」という批判が起こります。そのため、過度な審議拒否は世論の反発を招く可能性があり、野党側も自制を求められることがあります。

与党による審議拒否

通常、審議拒否は野党が議事妨害の戦術として行いますが、与党が野党からの追及を避けるために、委員会などの審議要求に応じない、あるいは国会を打ち切るといった戦術も、「与党による審議拒否」として批判されることがあります。

政治学者の田中信一郎氏は、2019年に与党が予算委員会の開催を拒否した事例を指摘し、与党も様々な形で審議拒否を行っていると述べています。ただし、野党の審議拒否に比べて、与党の審議拒否は有権者には分かりにくいと指摘しています。

専門家の意見

2013年、参議院の「国の統治機構に関する調査会」で、高安健将氏は参議院における問責決議や審議拒否が問題視されていると指摘し、参議院と首相・内閣・衆議院の間での調整と譲歩が重要であると示唆しました。

2007年、外交評論家の天木直人氏は、日本の野党が審議拒否を貫くのであれば、それは立派な国会戦術であり、国民の支持を得られる可能性があると述べました。

政治学者の岩井奉信氏は2018年に、議事妨害の手法はアメリカなど他国にも見られるものの、審議拒否は日本以外の先進国ではほとんど見られないと指摘しました。また、海外の多くの国では議会の会期が1年以上あるのに対し、日本では会期が短いことが、審議時間確保のための駆け引きが国会戦術の大きな部分を占めている要因であると分析しています。

まとめ

審議拒否は、日本の国会における独特な政治戦術であり、その有効性や影響については様々な意見があります。与野党間の駆け引きや、国民の政治に対する意識など、様々な要因が絡み合っていると言えるでしょう。

関連項目

議事妨害
強行採決
* 牛歩戦術

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