寸又峡温泉

寸又峡温泉

静岡県榛原郡川根本町の山間、南アルプスの南端部に位置する寸又峡に湧き出す温泉地が、寸又峡温泉（すまたきょうおんせん）です。かつて本川根町の一部だったこの地域は、豊かな自然景観の中にあり、静寂と温泉情緒を求める人々を惹きつけています。

泉質と効能

寸又峡温泉の湯は、硫黄泉を特徴としています。源泉温度は43.7℃、毎分540リットルの豊富な湧出量を誇ります。特に注目されるのは、その美肌効果の高さです。肌に良いとされる成分が含まれており、入浴すると肌が滑らかになることから、「美人の湯」として広く知られ、親しまれています。

温泉街の様子

寸又峡の渓谷沿いには、規模は大きくありませんが、趣のある8軒の旅館や民宿が点在し、温泉街を形成しています。宿泊してゆっくり湯を楽しむのはもちろん、町営の露天風呂も整備されており、日帰りでの入浴も可能です。深い山あいのロケーションは、景色の良さからオートバイのツーリング愛好家にも人気があり、休日には多くのライダーが訪れる場所ともなっています。

歴史

寸又峡エリアにおける温泉の利用は、明治22年（1889年）頃に北側の湯山地区で始まったとされています。しかし、その後の大間ダム建設に伴い、かつての湯山地区は水底に沈みました。現在の寸又峡温泉の礎が築かれたのは、昭和37年（1962年）にボーリングによる新たな源泉開発が行われ、温泉街が開かれてからのことです。この新しい源泉もかつての湯山地区に位置しています。

寸又峡温泉の名が全国的に広く知られるきっかけとなった出来事としては、昭和43年（1968年）に発生した金嬉老事件が挙げられます。この事件の舞台となったことで、メディアを通じて寸又峡という地名と温泉の存在が世に広く伝えられることとなりました。

また、過去には現在のアクセスとは異なるユニークな方法で温泉地へ向かうことができました。昭和26年（1951年）から昭和38年（1963年）にかけて、千頭森林鉄道を利用した宿泊客向けの輸送が行われていたのです。千頭駅から尾崎坂までの区間を、地元の観光協会が用意した特別な客車「すまた1号 - 3号」が運行されました。これらの客車は、元々は浜松電気鉄道で使われていたガソリンカーを改造したもので、中部電力所有の機関車に牽引されていました。森林鉄道によるアクセスは、当時の寸又峡温泉がまさに「秘境」であったことを物語るエピソードと言えるでしょう。

アクセス

寸又峡温泉への主なアクセス手段は、車または公共交通機関です。車で訪れる場合は、静岡県道77号川根寸又峡線の終点を目指します。鉄道を利用する場合、大井川鐵道大井川本線の千頭駅で下車し、そこから運行している路線バスに乗り換えて約40分で温泉地に到着します。大井川鐵道が運行するSL列車などと組み合わせて、旅情豊かなアクセスを楽しむことも可能です。

関連情報

寸又峡温泉への訪問を計画する際は、周辺の景勝地である寸又峡の散策や、温泉地の歴史に関わる金嬉老事件について事前に情報を得ておくと、より深くこの地を理解し、楽しむことができるでしょう。観光情報や詳細なアクセスルートについては、川根本町の観光協会などが提供する公式ウェブサイトなどで確認できます。

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