小姫

小姫の生涯とその背景

小姫（おひめ）は安土桃山時代の女性で、1585年に織田信雄の長女として生まれました。彼女の生涯は短かったものの、歴史的には重要な役割を果たしていました。小姫の生母については『寛政譜』において北畠具教の娘（千代御前）とされていますが、実際は母は三瀬の変で自害しており、これは誤解に基づく情報です。

小姫は羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）の養女となりますが、その正確な時期は不明です。しかし、小牧・長久手の戦いが終結した天正12年（1584年）以降にこの養子縁組が成立したと考えられています。この背景には、豊臣家が関東の徳川家と強い絆を築くための政治的な意図があったとされ、特に秀吉が関東出陣前に豊臣家と徳川家の結びつきを強化したかったことが影響しています。

小姫は天正18年（1590年）1月11日、わずか12歳で徳川秀忠と結婚しましたが、いくつかの記録では彼女の年齢が6歳であったという説も存在しています。この婚姻は、織田家と徳川家ではなく、豊臣家と徳川家との間の縁組であり、豊臣家の血筋を通じた政治的な狙いが込められていました。また、秀吉の妹・朝日姫が亡くなったことにより、徳川家との結びつきが絶たれることを懸念した秀吉によってこの婚姻が計画されたと言われています。

ただし、小姫が幼少であったため、この時点での結婚は正式なものとは見なされず、実際には婚約に近いものでした。彼女の早世により、正式な輿入れが行われることはありませんでした。その後、小姫は父信雄の失脚にもかかわらず、聚楽第の北政所のもとで育てられました。

小姫の生涯は1591年7月9日で幕を閉じ、享年は不詳ですが、推測では7歳とされています。彼女の死後、天瑞寺にて法要が行われ、戒名としては「甘棠院殿桂林宗香禅定尼」が与えられました。この戒名は、若干7歳の少女としては特異なものです。また、彼女の美称「小夫人」は、この時代において若い女性に対する特別な扱いを示しています。

一部の史料では、小姫は実父信雄の改易に伴い離婚後、織田家に戻ってから佐々一義と再婚し、1641年まで生きたと記載されています。しかし、天童藩織田家の系譜では、秀吉の養女としての小姫と一義に嫁いだ者を別人と見なしているため、議論が残ります。これにより、小姫の存在は豊臣・徳川間の政略結婚の象徴ともされており、彼女は歴史の中での重要な役割を果たした女性だったのです。

このように、小姫の生涯は戦国時代の政略や家族関係、そして、当時の女性の立場や役割を考える上で非常に興味深く、悩ましくもある歴史的な事例として語り継がれています。

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