三瀬の変

三瀬の変（みせのへん）

三瀬の変は、天正4年11月25日（1576年12月15日）に伊勢国で発生した、織田信長による北畠家粛清事件です。隠居していた北畠具教や、田丸城にいた長野具藤らが襲撃され命を落としました。この事件は、信長による伊勢国掌握を決定づける出来事となりました。

背景

永禄12年（1569年）、織田信長は伊勢国への侵攻を開始。大河内城の戦いで北畠家を追い詰めました。和睦の条件として、信長は次男・織田信雄（茶筅丸）を北畠具房の妹・雪姫と結婚させ、北畠家の養子とすることに成功します。元亀元年（1570年）には、具房の父である北畠具教が出家し、三瀬御所（現在の三重県多気郡大台町）に隠居しました。

元亀3年（1572年）、茶筅丸は元服して北畠具豊と改名。雪姫と正式に婚姻し、大河内城を廃して田丸城を新たな本拠としました。天正3年（1575年）には、信長の圧力により具房も隠居に追い込まれ、具豊は信意と改名し北畠家10代目当主となります。これにより織田氏は北畠家を掌握したかに見えましたが、具教やその側近たちはこれに不満を抱いていました。

元亀4年（1572年）3月、具教は武田信玄に対し、上洛の際には協力するという密約を結んでいました。この密約は天正4年（1576年）には信長の知るところとなり、信長は具教を挑発するような行動に出ます。同年夏には、信意が紀伊国熊野攻略を試みるも失敗。これにより、織田家と熊野勢との対立も深まりました。

事件の経過

三瀬御所

天正4年（1576年）11月、信長・信意親子は北畠一族の抹殺を計画します。信長は藤方朝成・長野左京亮らに具教殺害を指示。11月25日、滝川雄利・柘植保重・長野左京進らの軍勢が三瀬御所を包囲します。内通していた具教の近習・佐々木四郎左衛門の手引きにより、長野左京進は具教を討ち果たしました。具教は応戦したものの、最期は力尽きたと伝えられています。この際、具教の四男・徳松丸、五男・亀松丸らも殺害され、御所内は混乱に陥りました。

三瀬御所では、具教と2人の子の他、北畠家臣14人の武将が殺害され、多くの家人が殉死しました。

田丸城

一方、信意も同日に北畠家臣やその一門を田丸城に集め、一斉に抹殺を計画しました。饗応の席と偽って長野具藤・北畠親成・坂内具義らを呼び出し、合図と共に城内の北畠家臣を殺害。大河内具良も刺客によって殺害されました。翌日には、坂内具房が家臣の謀反によって殺害され、坂内御所は降伏しました。

田丸城に呼び出された北畠一門の中で助命されたのは、北畠具房ただ一人でした。具房は滝川一益預かりとなり、長島城に幽閉されました。

変後の戦い

粛清を逃れた北畠の将たちは霧山城に集結し抵抗を試みましたが、信長は羽柴秀吉らの軍勢を派遣し霧山城を包囲。霧山城は陥落し、城は廃城となりました。同年12月15日には、信意の側近であった津田一安が斬殺されています。

その後、具教の弟である北畠具親が挙兵しましたが、織田勢によって鎮圧され、具親は亡命しました。

これにより、織田氏は旧北畠具教・具房家臣の一門一派をほぼ伊勢から駆逐し、伊勢掌握を完了させました。

主な討死者

三瀬御所

北畠具教
徳松丸
亀松丸

田丸城

長野具藤
北畠親成
坂内具義
大河内具良

参考文献

『勢州軍記』
『北畠御所討死法名』
谷口克広『信長と消えた家臣たち: 失脚・粛清・謀反』中央公論新社、2007年 ISBN 4121019075

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