尾小屋鉄道

尾小屋鉄道：鉱山と地域の歩みを支えた軽便鉄道

石川県小松市に存在した尾小屋鉄道は、同市内の新小松駅から尾小屋駅までを結んでいた軽便鉄道です。17世紀末から18世紀初頭にかけて金山として開かれた尾小屋鉱山は、明治時代に銅山として再開発され、1886年の新鉱脈発見を機に大きく発展しました。この鉱山の鉱山鉄道として、尾小屋鉄道は1919年から1920年にかけて開通しました。

路線概要と特徴

全長16.8km、762mmの軌間を持つ全線非電化の単線路線でした。太平洋戦争中の陸運統制令にも関わらず、鉱山鉄道として独立性を保ちました。最盛期の1961年には年間利用者数が113万人にも上りましたが、1971年の尾小屋鉱山閉山後は経営が悪化。収入の3倍もの経費がかかる赤字状態となり、1977年に廃止されました。西武山口線を除くと、旅客営業を行った非電化軽便鉄道としては国内で最後の路線であり、廃止の際には大きな注目を集めました。

運行形態と設備

1973年5月時点では、旅客列車は1日16往復運行されていました。貨物列車や混合列車は設定されていませんでした。列車交換設備は吉竹駅、西大野駅、金平駅、観音下駅にありましたが、吉竹駅は側線扱いでした。また、1966年頃には西大野駅と観音下駅は無配置駅となり、朝の通勤時間帯のみ係員が派遣されました。1971年3月以降は列車交換は金平駅のみとなり、1974年9月からは金平駅も昼間の列車交換が廃止され無人化されました。朝夕の列車交換時にはOBの嘱託職員がポイントの切り替えを担当していました。

歴史

1916年に鉄道敷設免許を取得し、1917年に工事が着工。1919年11月26日に尾小屋～新小松間が開業し、旅客および手小荷物輸送を開始しました。1920年5月10日には全線が開通、貨物輸送も開始しました。当初は11駅でしたが、その後駅数は増加しました。1929年には尾小屋鉄道株式会社が設立され、1936年には日本鉱業（現JX金属）の系列会社となりました。1971年の尾小屋鉱山閉山を機に経営悪化が進み、1977年3月20日に大豪雪の中、路線は廃止されました。同社はその後、小松バス株式会社に社名変更し、2021年には北鉄加賀バス株式会社に合併しました。

車両

尾小屋鉄道には、蒸気機関車、ディーゼル機関車、気動車、客車、貨車などが在籍していました。特に、蒸気機関車や気動車は、その多くが他社からの譲渡や改造を経て使用されており、歴史的な経緯を物語っています。これらの車両の中には、いしかわ子ども交流センター小松館の「なかよし鉄道」や小松市立ポッポ汽車展示館などで動態保存・静態保存されているものもあります。 代表的な車両として、蒸気機関車5号（2代目）、ディーゼル機関車DC121、気動車キハ1、キハ2、キハ3、客車ハフ1、ホハフ3、ホハフ8などが挙げられます。これらの車両は、それぞれの製造メーカーや歴史、そして技術的な特徴を物語る貴重な存在です。

遺産と記憶

尾小屋鉄道は廃止されましたが、その歴史と遺産は様々な形で残されています。「なかよし鉄道」や小松市立ポッポ汽車展示館での車両保存、月津郵便局の風景印などを通して、多くの人々に記憶されています。また、映画やテレビドラマのロケ地としても使用されたことで、広く知られる存在となっています。これらの取り組みは、尾小屋鉄道の歴史と技術を次世代へと繋いでいく上で重要な役割を果たしています。

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