屍姦

屍姦（しかん）について

概要

屍姦とは、死亡した人間の体に対して性的な行為を行うことを指します。この行為は、通常の性的行為とは異なり、特異な性癖と見なされ、その背景にある心理状態や社会的な影響も含まれて考察されることがあります。また、屍姦は、単なる行為としてだけでなく、しばしば性の倒錯として位置づけられます。

法的な位置づけ

日本の法律では、屍姦行為に関する判例がいくつか存在します。
1948年の最高裁判決では、屍姦を行うこと自体は死体損壊罪や強姦致死罪には該当しないとされましたが、1958年の判決では、強姦の目的で暴行を加えた後、被害者が死んだとしても、その行為は強姦致死罪に含まれると裁定されています。これにより、屍姦の行為がどのように法的に判断されるかは、事例によって異なることが示されています。

社会的にも屍姦は注目され、その事例は時折ニュースに取り上げられます。例えば、光市母子殺害事件では、加害者が被害者を殺した後に遺体を犯したとされ、裁判では「生き返らせるための儀式」と主張しました。また、1993年の埼玉愛犬家連続殺人事件では、共犯者の証言により、女性の遺体を犯したとの事実が浮かび上がりました。

ネクロフィリアの概念

屍姦は、広義の「ネクロフィリア」という用語で説明されることもあります。この言葉は、ドイツの性科学者リヒャルト・フォン・クラフト＝エビングによって1886年に提唱され、性的精神病質の一種として記述されています。クラフト＝エビングは、ネクロフィリアを加虐性愛の一形態として「身の毛もよだつ兆候」と評価しました。

心理学者エーリヒ・フロムの見解によれば、ネクロフィリアは「死者に対する愛情」であり、「性交目的で死体を所有したいとの願望」ともされています。これは、死んだ者や腐敗したものに対する病的な欲望から生じる情動の一つと考えられています。

動物による屍姦の例

興味深いことに、屍姦は人間に限った現象ではなく、動物界でも観察されています。例えば、イルカやカラスなど、さまざまな動物が死んだ個体と交尾行動を行うことが報告されています。2003年には、オスのマガモが衝突死した別のオスの死体と交尾する事例が確認され、この研究によりイグ・ノーベル賞を受賞したケースもあります。

2023年にはタイで、社会的に劣位にあるオスのベニガオザルが死んだ雌と交尾する行動が観察されたことが報告されました。この研究では、霊長類が死亡の概念を理解しているかは不明であり、簡単に人間の屍姦と結びつけて考えるべきではないとの見解が示されています。

文学と屍姦

屍姦というテーマは、文学や映画においても取り上げられています。川端康成の『眠れる美女』、渡辺淳一の『愛の流刑地』、京極夏彦の『陰摩羅鬼の瑕』など、多くの作品がこの特異なテーマを扱っており、文芸の中で屍姦の存在感を示しています。特に日本の文学では、屍姦はしばしば人間の根源的欲望や死生観を探求する象徴として取り上げられることがあります。

屍姦は社会的に taboo なテーマでありながら、歴史的背景や法的定義、心理的要因を考える際に欠かせないトピックといえます。

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