山手駅

JR山手駅

横浜市中区大和町二丁目に位置するJR根岸線の山手駅（やまてえき、駅番号：JK 08）は、その名前とは裏腹に、古くからの山手地区の中心からはやや離れた場所に設けられています。駅名の由来やその後の影響には、興味深い歴史的背景があります。

歴史的背景と駅名の由来

日本国有鉄道（国鉄）が当初計画した根岸線の駅配置において、現在の山手駅周辺は「大和町駅」として予定されていました。しかし、本来の山手地区（現在の石川町駅寄り）近くに計画されていた「山手町駅」が、地元の強い運動により石川町駅として開業することになり、結果として当駅が「山手駅」という名称で開業することになったのです。これは、当初の計画とは異なる駅名が付与された事例と言えます。

この「山手」という駅名が、当時並行して運行されていた京浜東北線から直通運転を行っていた山手線との間で混乱を招いた時期がありました。「山手駅行きの列車（横浜方面へ向かう列車）」と誤認する利用者が発生したため、これがきっかけの一つとなり、1971年には山手線の行先表示が「山手 YAMATE」から「山手線 YAMANOTE-LINE」に変更され、読み方も「やまてせん」から「やまのてせん」へと統一されることになりました。

本来の山手町は、港の見える丘公園や外国人墓地などが位置する、当駅よりも北側、石川町駅寄りのエリアです。一方、当駅の所在地はかつての久良岐郡根岸村の一部であり、周辺の町名（立野、竹之丸、仲尾台、矢口台、豆口台など）の多くも根岸村の字（あざな）に由来しています。つまり、開港以来の外国人居留地として知られる伝統的な山手町の最寄り駅ではなく、むしろ横浜市街の「山手（やまのて）」と呼ばれる高台の住宅地に位置する駅と言えます。

駅名決定の際には、本来の山手地区の住民（山手東部町内会）から、来訪者が当駅で誤って降りてしまう可能性を懸念し、駅名を「山手」としないよう国鉄に対して請願が出されたこともあります。

当駅開業以前、この地域の交通は主に横浜市電に依存していました。そのため、根岸線の開通と当駅の開業は、地域住民にとって画期的な交通手段の誕生となりました。しかし、駅の北東に位置する大和町の商店街は、かつて市電を利用するために豆口方面から人々が集まる場所として栄えていましたが、当駅の開業により利用者の流れが変化し、一転して寂れてしまうという影響もありました。

駅の歩み

当駅は、1964年5月19日に国鉄根岸線の桜木町駅 - 磯子駅間が開通した際に開業しました。その後、国鉄分割民営化に伴い、1987年4月1日にJR東日本の駅となります。設備面では、1993年8月6日に自動改札機が導入され、2001年11月18日にはICカード「Suica」の利用が可能となりました。近年では、2013年3月23日にみどりの窓口の営業を終了し、翌日にはバリアフリー化を含む新駅舎への移転が完了しています。同年の7月1日には業務委託駅となり、2022年3月25日には安全対策としてホームドアの使用が開始されました。

駅構造

山手駅は、相対式ホーム2面2線を有する高架駅です。駅の両側はトンネル（石川町方の第2竹之丸トンネル、根岸方の矢口台トンネル）に挟まれており、駅自体は500メートルに満たない地上空間に位置しています。駅の下を複数の道路が通るため、独特のガード下の風景が広がっており、近隣駅とは異なる景観が特徴です。

開業当初の駅舎は横浜方の高架下にあり、各ホームへは階段で連絡していました。構造上の制約からエレベーターやエスカレーターの設置が困難でしたが、バリアフリー化工事が行われ、2013年3月24日に大船方に約50m移設された新駅舎が開業しました。新駅舎には、各ホームにエレベーターが1基ずつ、大宮方面ホームにはエスカレーターが設置され、利便性が向上しました。旧駅舎は解体され、現在は駐輪場として活用されています。

現在はJR東日本ステーションサービスが業務を受託する業務委託駅です。自動券売機や自動改札機は設置されていますが、新駅舎移転後も指定席券売機は設けられていません。指定券類を購入する場合は、隣接する根岸駅または新杉田駅を利用するよう案内されています。かつて旧駅舎内にあった「レッツキヨスク山手1号店」は2013年3月29日に閉店し、現在は「NewDays山手店」が営業しています。

特定都区市内制度において、「横浜市内」の駅に区分されています。

利用状況

2023年度の1日平均乗車人員は16,480人であり、根岸線内の駅の中では最も少ない駅となっています。しかし、周辺には聖光学院中学校・高等学校、神奈川県立横浜緑ケ丘高等学校、横浜国立大学教育学部附属横浜小学校など、多くの児童・生徒が通学する学校が点在しているため、特に朝の通勤・通学ラッシュ時には大変混雑します。

駅周辺

駅周辺は主に住宅地が広がっています。駅前広場は狭く、周辺の道路も細い路地が多いのが特徴です。観光地として有名な横浜の山手地区（港の見える丘公園や外国人墓地など）へは、JR石川町駅またはみなとみらい線元町・中華街駅が最寄りとなり、当駅から徒歩圏ではありません。

駅の所在地は、北側が大和町二丁目、中央東側が立野、南側が矢口台、西側が仲尾台と、複数の町域が複雑に入り組んでいます。

主な周辺施設

史跡・観光名所：根岸森林公園・馬の博物館、山手公園
教育機関：横浜市立立野小学校、横浜市立仲尾台中学校、横浜国立大学教育学部附属横浜小学校、聖光学院中学校・高等学校、神奈川県立横浜緑ケ丘高等学校
郵便局：横浜大和郵便局、横浜北方郵便局、横浜山元町郵便局

バス路線

駅前広場が狭いため、バスロータリーは整備されていません。駅改札を出て正面の横断歩道を渡った先に、横浜市営バスが発着するバスのりばが二つ設けられています。バス停留所名は「山手駅前」です。

1番のりば：山手駅循環、本牧和田方面
* 2番のりば：桜木町駅前、山下ふ頭、元町入口方面

隣の駅

東日本旅客鉄道（JR東日本） 根岸線

■快速・■■各駅停車：石川町駅 (JK 09) - 山手駅 (JK 08) - 根岸駅 (JK 07)

その他

音楽作品との関連もあり、松たか子の楽曲「山手駅」や、小田和正のアルバム『MY HOME TOWN』のジャケット写真に当駅が登場しています。

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