山田緑地

山田緑地（やまだりょくち）は、福岡県北九州市小倉北区の南西部に位置する、広さおよそ140万平方メートルにおよぶ自然豊かな公園です。1995年（平成7年）5月27日に開園し、現在は指定管理者によって管理されています。この緑地の大きな特徴は、かつて旧日本陸軍および在日アメリカ軍の弾薬庫として利用されていた歴史を持つ点と、その特殊な経緯から手つかずに守られてきた豊かな自然、特に照葉樹林が広がっている点です。

来歴

この地は、第二次世界大戦中には旧日本陸軍の弾薬填薬施設として利用されていました。終戦後、敷地は占領軍であるアメリカ軍に接収され、1972年（昭和47年）に日本へ返還されるまで、引き続き弾薬関連の施設として利用が続けられました。1970年12月には、米軍から突然の返還通告があり、急遽受け入れ準備が進められました。返還された敷地は、大蔵省（現財務省）、自衛隊、北九州市の三者に分割され、北九州市は一部の土地を使い「北九州やまだ子供広場」を開園。その後、大蔵省管轄分も譲渡を受け、1987年から公園整備を開始、1995年に山田緑地として開園しました。敷地の北側は現在も陸上自衛隊山田訓練所として使用されており、周辺地域との山道は現在通行できません。旧軍や米軍がこの地を使っていた時代には、米軍による弾薬作業がベトナム戦争と関連があるとして国会で議論されたことや、発見された奇形ガエルが環境汚染を疑われたが遺伝と判明したこと、核災害注意標識の存在が報じられたことなどがありました。弾薬庫へは、南小倉駅から専用鉄道線（1941年敷設、1973年廃止）があり、ここから弾薬が輸送され、通過路線で反対運動やテロ事件も発生するなど、社会的な影響も生じました。

公園概要

山田緑地には、弾薬庫時代の遺構が残されています。約半世紀にわたり一般の立ち入りが制限されたことで、この地には本来の豊かな照葉樹林が手つかずの状態で保全されました。公園は「三十世紀の森づくり」をテーマに、自然環境の保護と利用の両立を目指し、以下の三つのゾーンに区分されています。

利用区域（約48.5ha）: 正門近くの開放的な空間。「森の家」や芝生広場などがあり、気軽に自然を楽しめます。
保全区域（30ha）: 既存の植生を維持しつつ自然に触れるエリア。環境負荷を抑えるため利用の時間や人数に制限があります。
保護区域（70ha）: 原則として人の立ち入りを禁じ、自然本来の生態系、特に照葉樹林への移行を静かに見守る区域です。

公園近くの小熊野川はホタルの名所として知られています。山田緑地は、その整備の取り組みが評価され、平成8年度手づくり郷土賞を受賞しています。

利用案内

入園は無料です。
駐車場料金: 普通車300円/日、大型車1000円/日。
バス利用: 西鉄バス北九州「蒲生入口」（行先番号45・49）バス停から徒歩約10分。土日祝日は行先番号45の一部便が山田緑地まで乗り入れます。

関連する事故

この地に関連して、過去には二つの爆発事故が発生しています。

二又トンネル爆発事故: 1945年11月12日発生。米軍による火薬処理中の失敗が原因。
一の谷4号火薬庫爆発事故: 1946年5月21日発生。火薬庫爆発により、敷地内に立ち入った住民62名が犠牲となりました。

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