川俣ダム

川俣ダム

川俣ダム（かわまたダム）は、栃木県日光市川俣に位置し、利根川水系鬼怒川の最上流部で建設された、多目的なアーチ式コンクリートダムです。このダムは、鬼怒川上流ダム群の一つに該当し、さまざまな利水と環境保全の役割を担っています。

沿革

鬼怒川は、利根川水系最大の支流であり、全長170.0km、流域面積は1,776平方kmと、栃木県をほぼ網羅しています。歴史的に水害の発生が頻繁であったため、1938年に旧内務省により「河水統制事業」が始まり、鬼怒川が初の対象河川に指定されました。その後、1931年には支流の男鹿川に治水ダム計画がスタートし、1912年には、日本初のコンクリートダムである黒部ダムが鬼怒川本川で完成しました。

戦時中、発電用ダムの建設に向けた調査は行われましたが、戦争の影響で中断されることとなります。戦後、カスリーン台風による甚大な被害を受け、1949年に「利根川改訂改修計画」が策定されました。これに伴い1952年から利根川上流ダム群の建設計画が展開されます。一方で、五十里ダムの建設も再開され、1966年に川俣ダムが完成しました。

2017年以降は、ダム周辺の補強工事が行われ、90mと70mの大型足場が組まれ話題となりました。現在、このダムは洪水調節や農業用水確保、発電のために機能しており、国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所によって、川治ダム、五十里ダムとともに総合的に管理されています。

環境再生と観光整備

川俣ダムは、鬼怒川が作り出した美しい瀬戸合峡に位置していますが、完成後は水量が急激に減少しました。しかし最近では、河川流量を維持するための放流が行われ、清流が復活しました。さらに周辺環境も整備され、ダム直下には遊歩道と展望台が設けられ、吊り橋も一般開放されています。「瀬戸合峡渡らっしゃい吊橋」と名付けられたこの吊り橋からは、深さのある渓谷やダムの全貌を楽しむことができます。

また、ダムによって形成された人造湖は「川俣湖」と呼ばれ、湖畔には新たに発見された川俣湖温泉があります。湖の上流には高山植物が生い茂る美しい鬼怒沼が存在し、多くの自然愛好者や観光客を魅了しています。さらに、2006年には川俣ダムの非常用洪水吐きのゲートが開放され、一日限りの「幻の滝」として117.0mの落差を誇る景観が一般公開され、大盛況となった事例もあります。

観光情報

川俣ダム周辺は自然景観が豊かで、ハイキングや自然観察に最適なスポットです。観光施設としては川俣湖温泉があり、リラックスできる場所を提供しています。ダムへのアクセスも便利で、栃木県内の観光名所と併せて訪れることが可能です。また、地域のイベントや季節ごとの美しい風景も魅力の一つです。お越しの際はぜひ、ダムの歴史や自然の美しさを感じてみてください。

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