川越街道

川越街道：歴史と現在をつなぐ道

川越街道は、江戸時代から続く歴史深い街道です。江戸日本橋を出発点とし、中山道から分岐して川越城下に至る重要なルートとして機能していました。伊能忠敬による測量では、全長約43キロメートルに及ぶと記録されています。

歴史街道としての川越街道

室町時代、上杉持朝の家臣・太田道灌が江戸城と川越城を築いたことにより、それまで点在していた古道を整備し、両城を結ぶ道が形成されました。これは扇谷上杉家の防衛線としての役割も担っていました。その後、江戸時代には川越藩主・松平氏によって中山道の脇往還として整備され、「川越道中」「川越児玉往還」などと呼ばれていました。「川越街道」という名称が定着したのは明治時代以降です。

この歴史街道としての川越街道は、板橋宿平尾追分から分岐し、川越城西大手門に至る経路でした。現在では「旧川越街道」と呼ばれ、一部区間は埼玉県道109号新座和光線として指定されています。街道沿いには、上板橋、下練馬、白子、膝折、大和田、大井の6つの宿場が設置され、伝馬役などが置かれていました。各宿場には本陣や脇本陣があり、宿場出入口には木戸が設けられて警備がされていました。

川越街道は中山道よりも距離が短かったため、多くの通行者で賑わい、五[[街道]]に準じる往還として重要な役割を果たしました。特に中山道が河川の氾濫で通行止めになった際には、川越街道の重要性はさらに増していました。物資輸送の面でも新河岸川舟運と連携し、川越の経済活動を支える重要な交易路として機能していました。また、川越藩主の参勤交代路でもあり、他の藩の大名も中山道に代えて川越街道を利用するケースも少なくありませんでした。

寛政年間（1789～1801）に江戸で焼き芋が流行すると、文化年間（1804～1818）には川越産の芋を使った焼き芋が「栗（九里）より（四里）うまい十三里」という宣伝文句で売り出され、一大ブームとなりました。明治13年（1880）からは乗合馬車も運行されるようになりましたが、利用者は多くはありませんでした。現在も新座市やふじみ野市周辺には、街道筋の並木道や馬頭観音などが残り、当時の面影を伝えています。

1914年（大正3年）には東上鉄道（現在の東武東上本線）が開通し、交通手段に変化が現れ始めました。昭和初期には自動車の普及により、交通量の増加に対応するため、東京都内では道路拡張工事が行われました。しかし、商店街などの発達により用地買収が困難な区間では、旧街道とほぼ並行して新道が建設されました。これが現在の国道254号、いわゆる「川越街道新道」です。

国道254号（川越街道新道）

現在、川越街道といえば一般的にこの国道254号を指すことが多いです。東京都豊島区池袋六ツ又交差点から埼玉県川越市新宿町交差点までを結び、多くの自治体を経由しています。この区間は交通量が多く、特に池袋六ツ又交差点は交通事故多発地点として知られています。また、練馬区東埼橋交差点から新座市英インターチェンジまでの区間は「新座バイパス」と呼ばれています。

旧川越街道と新道の関係

旧川越街道と国道254号は、重複区間と分岐区間を繰り返しながら並行して走っています。特に東京都内では、複数の商店街や細道、坂道などを経て、埼玉県道109号新座和光線と接続しています。旧街道沿線には、かつての宿場町の面影を残す地域や歴史的な建造物、史跡が点在しています。

川越児玉往還

川越児玉往還は、江戸から川越を経て上州藤岡を結ぶ、川越街道と児玉街道を合わせた街道です。中山道の脇往還として整備され、役人などが多く利用していました。距離が短く通行量が多かったことから、女性の利用者も多く「姫街道」とも呼ばれていました。川越児玉往還は、現在の国道254号とは経路が異なっている点に注意が必要です。

まとめ

川越街道は、江戸時代から続く歴史と、現代の交通事情が複雑に絡み合った、奥深い歴史を持つ街道です。歴史街道としての面影と、現代の国道として機能する姿の両面を知ることで、その魅力をより深く理解することができます。

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