板橋宿

板橋宿：江戸の玄関口、中山道の起点

板橋宿は、江戸時代の中山道六十九次の最初の宿場として栄え、現代の東京都板橋区に位置しています。江戸の北の玄関口として、多くの旅人や商人でにぎわった歴史ある町です。中山道だけでなく、川越街道の起点でもあり、交通の要衝として重要な役割を果たしていました。

江戸四宿の一つとしての繁栄

板橋宿は、品川宿、千住宿、内藤新宿と並ぶ江戸四宿の一つに数えられていました。江戸の境界近くに位置し、江戸後期には宿場入り口の大木戸より内側が「江戸御府内」として扱われていたほどです。宿場は、上宿、仲宿、平尾宿の3つの地区から成り、それぞれに名主が置かれていました。上宿と仲宿の境目は石神井川に架かる板橋であり、仲宿と平尾宿の境目は観明寺付近でした。

天保12年から15年（1841年から1844年）の調査によると、宿場の全長は約2.2km、町並みの長さは約1.7kmに及びました。宿内には人口2448人、家屋573軒が確認されています。本陣1軒、脇本陣3軒、旅籠54軒が営業し、仲宿には問屋場、貫目改所、馬継ぎ場、番屋などが集積していました。上宿には木賃宿や馬喰宿が建ち並んでおり、多様な商業活動が営まれていたことが伺えます。

日本橋が主要街道の形式上の起点ではありましたが、実際の旅の起点・終点としては、江戸四宿が重要な役割を担っていました。板橋宿は江戸四宿の中で規模は最小でしたが、中山道有数の賑わいを見せていました。特に、平尾宿には多くの飯盛旅籠が軒を連ねており、150人もの飯盛女が置かれることが許されていました。茶屋や酒楼も多く、旅人だけでなく、見送り人や飯盛女目当ての客も集まり、活気に満ち溢れていた様子が想像できます。

幕末の戊辰戦争と宿場の終焉

幕末の戊辰戦争では、中山道から江戸攻撃に進軍中の官軍が、天璋院からの書状により板橋宿で停止しました。明治時代に入ると中山道の重要性が低下し、板橋宿は徐々に衰退していきました。そして、遊廓へと変貌を遂げ、昭和中期まで賑わいをみせました。かつて遊廓として使われていた「新藤楼」の玄関部分は、現在板橋区立郷土資料館に移築保存されています。

川越街道の起点としての役割

板橋宿は中山道の宿場であると同時に、江戸側から分岐する川越街道（川越児玉往還）の起点でもありました。平尾宿を起点とした川越街道は「平尾追分」と呼ばれていました。日本橋から2里の地点には一里塚もありましたが、現在は痕跡が残っていません。

板橋と周辺の史跡

板橋は仲宿付近の石神井川に架かる橋で、地名の由来となっています。『義経記』などにも登場する歴史ある橋で、江戸時代のものは歌川広重の浮世絵にも描かれています。現在の橋はコンクリート製ですが、欄干に木目模様を施すなど、往時の雰囲気を演出しています。

周辺には、馬市が開かれていた遍照寺や、縁結び・縁切りの信仰を集めた縁切榎などの史跡も残っています。縁切榎は、徳川家に嫁いだ皇女たちも避けて通ったと伝えられるほど、強力な信仰の対象でした。また、志村の一里塚は、保存状態の良い一里塚として知られています。清水坂は中山道最初の難所であり、富士山を望むことができる景勝地でした。

これらの史跡は、板橋宿の歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、現在も多くの観光客が訪れています。板橋宿周辺には、多くの寺社仏閣や史跡があり、歴史散策に最適な場所です。当時の賑わいを偲びながら、歴史に触れる旅をしてみてはいかがでしょうか。

交通アクセス

現代の交通手段としては、JR埼京線板橋駅、東武東上線下板橋駅、都営地下鉄三田線板橋本町駅、板橋区役所前駅、新板橋駅などが最寄り駅となります。バス路線も充実しており、国道17号（旧中山道）を走る国際興業バスを利用できます。自動車では、国道17号、国道122号、国道254号（川越街道）、東京都道311号環状八号線などが利用できます。

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