市中引き回し

市中引き回しについて

市中引き回し（しちゅうひきまわし）は、江戸時代の日本で採用されていた残酷な刑罰の一つであり、死刑囚を馬に乗せ、連行することによって罪を公に告知する制度でありました。この引き回しは単独で存在する刑罰ではなく、基本的には死刑やそれ以上の刑罰が言い渡された罪人に対する付加的な罰でありました。江戸時代においては、処刑を見せることが社会的な役割を果たしていたため、その過程で受刑者が公然と晒されることが重要視されていました。

引き回しの実施方法

引き回しが行われる際には、罪人はまず伝馬町牢屋敷から引き出され、縄で縛られて馬に乗せられます。罪人の乗る馬には、罪状を記載した捨札や幟が持たされ、江戸の街中を一定の過程を経て行進しました。行列には二人の検使が付き添い、非人や谷の者が周囲を固め、手には武器や捕具を持ち、見物人を抑える役割を果たしていました。

罪状と引き回しの道のり

江戸市中での引き回しは、主に二通りの道のりが存在しました。一つは「江戸中引廻」と呼ばれ、伝馬町牢屋敷から出発し、江戸城の周囲を一周して戻ってくるパターンです。もう一つは「五ヶ所引廻」であり、江戸城外郭の特定の場所を巡回して最終的に刑場に向かうものでした。前者では約20kmの距離を歩むことになり、長時間にわたり罪人がさらされることが多かったのです。

主な罪状とその例

市中引き回しの対象となる罪状は非常に多岐にわたります。強盗殺人や毒薬の販売、文書偽造などがその一例であり、無二の重罪が多かったことが特徴です。特に強盗殺人や不義密通といった、社会的に許されない行為が対象とされました。江戸時代の治安維持の観点からも、これらの重犯罪者に対しては強い制裁が求められていたのです。

実行の実態と参加者の心情

市中引き回しはその過程で多くの人々の注目を集めるものであり、庶民にとって特別な見世物のような存在でもありました。しかし、その一方で実行側の人々は、精神的な重圧を感じることが多く、積極的に参加を望まないことが一般的でした。加えて、引き回しの際には罪人に金銭が渡され、途中で酒や煙草を購入する場面も見受けられましたが、このような行為には倫理的な葛藤も含まれていたことでしょう。

市中引き回しの廃止

市中引き回しの制度は1869年7月8日付けの刑法官指令によって廃止されました。最終的な例として記録に残されたのは、1870年に行われた処罰でした。この制度を通じて、江戸時代の社会における法と秩序の考え方を垣間見ることができます。

まとめ

市中引き回しは、江戸時代における厳しい法罰の具現化であり、社会全体に向けた牽制の意味合いも含まれていました。その一方で、時代の変遷とともに残酷な実行方法が廃止されていったことは、社会がどのように法を理解し、執行していたかを考えさせられる歴史的な要素でもあります。

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