市松人形

市松人形について

市松人形（いちまつにんぎょう）は、日本の伝統的な着せ替え人形の一種であり、特に東人形や京人形とも称され、京阪地方では「いちまさん」として親しまれています。この人形は、主に女児の遊び道具としてだけでなく、裁縫の練習台としても用いられることがありました。

構造と特徴

市松人形は、頭と手足が桐塑や木で作られ、これに胡粉という材料を塗り仕上げてあります。胴体部分には、おがくずを詰め込んだ布地が使われており、通常は衣装がついていない裸の状態で販売されています。衣装は購入者が自ら作成するため、個々に異なるスタイルを持つことができます。

市松人形のサイズは20cm程度から80cmを超えるものまで様々ですが、一般的には40cm前後のものが多く見られます。また、女児用の市松人形は通常おかっぱ頭に植毛が施されており、男児用のものは頭髪が筆で描かれています。

名前の由来

市松人形の名前の由来にはいくつかの説があります。ひとつは、江戸時代中期の歌舞伎役者、佐野川市松の顔立ちに似ているとされること。もうひとつは、その当時「市松」という子供の名前が多く存在したため「子供の人形」として名づけられた説。また、市松模様の衣装をまとわせて販売されていたことから、その名が付けられたとも言われています。

市松人形の変遷

江戸時代には「人形」と言えば市松人形を指すほどの人気を誇っていましたが、子供のおもちゃとしては壊れやすい性質から次第に市松人形の需要は減少し、セルロイド製やソフトビニール製の人形に取って代わられるようになりました。それに伴い、市松人形の役割は観賞用へと変化しました。観賞用として作成された市松人形の中には、着せ替えできないものも存在しています。

1927年には、アメリカに「人形大使」として送られたことをきっかけに一時的に注目を集めましたが、おもちゃとしての復権には至りませんでした。

現在の市松人形

現在流通している市松人形は、主にひな人形の横に置かれることが多く、頭部が石膏、そして体がポリウレタンで作られているタイプが一般的です。このような人形は台座に固定されており、着せ替えができない構造になっています。しかし、座っている姿や着せ替えが可能なタイプは、専門の人形作家によって作られており、これらは伝統工芸品として評価されています。

関連項目

• - 日本人形: 日本の伝統的な人形文化に属する他の種類の人形
• - ビスク・ドール: 1855年のパリ万博に出品された市松人形が影響を与えたとされるドールのこと

市松人形は、日本の伝統と文化が息づく存在として、今もなお多くの人々に愛されています。

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