常石敬一

常石 敬一について

常石 敬一（読み：つねいし けいいち、1943年10月26日 - 2023年4月24日）は、日本の科学史及び科学論における著名な研究者であり、神奈川大学の名誉教授でした。彼は科学史や科学社会学、特にSTS（科学技術と社会）の分野において大きな業績を残しました。また、生物化学兵器の軍縮や731部隊に関する研究でも知られています。

経歴

常石は東京都に生まれ、1966年に東京都立大学の理学部物理学科を卒業しました。その後、東京大学大学院工学系研究科を修了し、1973年には長崎大学の講師に就任しました。この大学では教養部で教授を務め、1989年からは神奈川大学経営学部の教授として教育に尽力しました。2004年には定年退職し、その後名誉教授の称号を受けました。残念ながら、彼は2023年4月24日に膵臓がんのため79歳で逝去しました。

松本サリン事件への関与

常石は松本サリン事件においても重要な識見を示しました。事件発生当初は外因物質や薬品に関する情報が不十分であったにもかかわらず、1994年6月28日の夕刊で「有機リン系の農薬が神経ガスに結びついた可能性がある」との見解を発表しました。翌日には、サリンの製造方法に関するコメントをし、身近な素材がどのように危険な兵器に変わりうるかを指摘しました。

731部隊研究の第一人者

彼は731部隊研究における第一人者として評価されています。戸邉秀明は彼の業績を高く評価し、常石がこの分野に与えた影響の大きさを強調しています。731部隊は日本の過去の歴史の中で非常に暗い一面を持つ存在であり、常石の研究はこの歴史を解明する上で欠かせないものでした。

著作とその意義

常石敬一は多くの著書を執筆しています。その中には、1978年に発表された『消えた細菌戦部隊 関東軍第731部隊』や、1994年の『医学者たちの組織犯罪―関東軍第七三一部隊』などがあります。これらの著作は731部隊の実態を詳細に解説し、戦争罪に関連する問題を突き詰めています。また、『原発とプルトニウム パンドラの箱を開けてしまった科学者たち』や、『3.11が破壊したふたつの神話 原子力安全と地震予知』といった近代における科学技術の問題にも言及しています。

共編著および訳書

常石は国内外の多くの学者と共著・訳書を出版しました。特に『原典科学史 近代から現代まで』や、トーマス・クーンの『コペルニクス革命 科学思想史序説』の翻訳など、多様な視点から科学を捉え直す重要な文献を提供しています。これらは学術界で高い評価を受けており、科学史の理解を深めるための資料として広く利用されています。

常石敬一の豊かな学識と研究は、今後も多くの人々に影響を与え続けることでしょう。彼の業績は日本の科学史の中で重要な位置を占め、世界の科学技術の理解にも貢献しています。

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