影の森

ドクター・フー 第4シリーズ「影の森」：仮想現実と微生物の脅威、そしてリヴァー・ソングの死

2008年6月7日、BBC Oneで放送されたイギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第4シリーズ第9話「影の森」(原題:Forest of the Dead)は、前話「静寂の図書館」と2部作を形成する後編です。51世紀の巨大図書館を舞台に、タイムトラベラーであるドナ・ノーブルと10代目ドクターの壮絶な冒険が描かれています。

物語の概要: ドナ・ノーブルは、惑星規模の図書館のハードドライブ内に存在する仮想現実世界に閉じ込められています。そこで彼女は、全くの偽りの記憶、結婚生活を植え付けられ、幸せな家庭を築いていると思い込んでいます。一方、10代目ドクターは、ヴァシュタ・ナラーダと呼ばれる危険な微生物の群れから逃れ、仮想現実の中に閉じ込められた数千人もの人々とドナを救出しようと奮闘します。この物語の中で、ドクターの未来において深く関わることになる考古学者、リヴァー・ソングが命を落とすという衝撃的な展開も描かれています。リヴァー・ソングは、ドクターとこの時点で初めて出会います。

連続性と伏線: 脚本家のスティーブン・モファットは、物語における伏線や連続性に工夫を凝らしています。リヴァー・ソングがヴァシュタ・ナラーダから一行を逃がすために使った武器は、以前のエピソード「ドクターは踊る」でジャック・ハークネスが使用したソニック・ブラスターと同じものであると明かされています。これは、「わかれ道」の後にターディスに残されたソニック・ブラスターが、未来のドクターによってリヴァー・ソングに回収されたという設定に基づいています。「正方形銃」というニックネームは、過去のエピソードでローズ・タイラーが付けたものです。このように、過去のエピソードとのつながりを示すことで、シリーズ全体の整合性を保っています。

製作の裏側:

脚本: 当初、「静寂の図書館」と「影の森」は"River's Run"というタイトルで企画されていました。しかし、製作の比較的遅い段階で現在のタイトルに変更されました。ドナが仮想現実の中で持つ2人の子供、ジョシュとイーラの名前は、スティーブン・モファットの子供と友人の名前から取られています。
キャスティング: リヴァー・ソング役には、当初ケイト・ウィンスレットの起用が検討されました。エグゼクティブ・プロデューサーのラッセル・T・デイヴィスは、彼女を「ある種のドクターの妻」と表現していました。最終的にリヴァー・ソング役には、『ER緊急救命室』で知られるアレックス・キングストンが選ばれ、デイヴィスは彼女を絶賛しました。ストラックマン・ラックス役には、コメディグループ「ザ・リーグ・オブ・ジェントルメン」のメンバーであるスティーヴ・ペンバートンが起用されています。ペンバートンは『ドクター・フー』シリーズに深く関わっており、他のメンバーであるマーク・ゲイティスも多数のエピソードに脚本や出演で参加しています。
* 撮影: 「静寂の図書館」と「影の森」の多くのシーンは、ウェールズの主要都市であるスウォンジーで撮影されました。ブラングィン・ホール、アルコア工場跡地、オールド・スウォンジ中央図書館などが撮影場所として使用され、物語の世界観を構築しています。キャサリン・テイトが着用したウエディングドレスは、過去のエピソード「消えた花嫁」で彼女が着用したものと同じものです。

反響: 「影の森」は、784万人の視聴者数を記録し、視聴率は40%に達しました。これは、第4シリーズで最高記録であり、この時間帯の放送の中でもトップクラスの数値です。Appreciation Indexは89を記録し、これも新シリーズにおける最高値の一つとなりました。「静寂の図書館」と共に、ヒューゴー賞映像部門短編部門にもノミネートされるなど、高い評価を得ています。

この二部作は、仮想現実というテーマを巧みに用い、複雑なストーリー展開と優れた演技で視聴者を魅了しました。また、未来からの訪問者であるリヴァー・ソングの登場は、シリーズ全体に大きな影響を与え、後のエピソードに繋がる重要な伏線となっています。ドクターとリヴァー・ソングの関係は、今後の物語において大きな謎として展開していくことになります。

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