徹甲弾

徹甲弾の概要

徹甲弾（てっこうだん）は、装甲を貫通することを目的に設計された特別な砲弾です。このタイプの弾薬は艦砲や戦車砲、航空機関砲など様々な兵器で使用され、主に高い硬度と質量を持つ弾体で装甲を打破します。徹甲弾には、弾体が高硬度で重量を持つことで貫通を図るタイプ（AP, APHE）と、軽量化し高速度で運動エネルギーを利用するタイプ（HVAP, APDS, APFSDS）が存在します。本記事では主に、徹甲弾の特性や理論について詳しく説明していきます。

理論

徹甲弾はその貫通特性に応じて、弾体が損耗せず健全な状態で貫通するものと、弾体が消耗しながら貫通するものに大別されます。

健全な徹甲弾の理論

徹甲弾の運動に関する最初の定理は、Benjamin RobinsやLeonhard Eulerによって提案され、これはニュートンの法則に基づいた運動モデルです。彼らの理論では、弾体の加速度はその材質や寸法、装甲の強度によって決まり、侵徹深さは衝突速度の二乗に比例すると考えられました。しかし、Jacob de Marreの経験則では、実際の貫通深さは衝突速度の1.3〜1.4乗に比例しています。

さらに1835年にJean-Victor Ponceletは、侵徹に関する速度の影響を考慮した新たなモデルを提案し、その後の研究でも弾体の加速度が侵徹深さに及ぼす影響についての考察が行われています。Forrestalは装甲の強度についてもCavity expansion analysisを用いて評価し、弾薬の性能向上に貢献しました。

消耗する徹甲弾

一方、APFSDSやHEATなどの高速度で侵徹する弾薬では、装甲からの抵抗により弾体が塑性変形し、消耗することがあります。この場合、従来の理論は適用できず、新たな理論が必要とされました。Birkhoffらは流体力学的アプローチを用いて侵徹速度と深さを導出し、このような貫通メカニズムを「Hydrodynamic penetration」と呼びました。

歴史

徹甲弾は大砲や装甲と並行して発展しており、第二次世界大戦中においてドイツや日本、アメリカの軍においてその技術がピークに達しました。特に、鉄鋼の装甲を貫通するためには、弾薬の材質には高い強度と靭性が求められました。

初期の徹甲弾は、艦砲の発展を背景に「重さと硬さを兼ね備えた弾薬」によって装甲を破壊することを目指していました。しかし新たな装甲技術が開発されるにつれて、従来の設計が通用しなくなり、装甲の特性に適した新たな設計が必要となりました。これにより、速度のある弾薬が主流となり、その設計には金属板や軽金属製の被帽が採用され、装甲貫通力が大幅に向上したのです。

構造

徹甲弾は、金属または軽金属で作られた被帽と、鋼鉄からなる弾体で構成されています。また、徹甲榴弾のように内部に炸薬を含み、貫通後にさらに破壊を引き起こすものも存在します。弾薬によっては、着弾後に残る被帽が周囲に破片を飛ばし、貫通力を高めるという効果も期待されるのです。

このように、徹甲弾はその設計や理論において豊かな歴史があり、装甲に対する適切な威力を発揮するための技術的な工夫が盛り込まれています。

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