恋する小惑星

『恋する小惑星』作品解説

『恋する小惑星』（こいするアステロイド）は、Quroによる日本の4コマ[[漫画]]で、『まんがタイムきららキャラット』にて2017年3月号から2024年8月号まで連載されました。略称は「恋アス」として親しまれています。2020年1月から3月にはテレビアニメも放送され、幅広い層に人気を博しました。

作品の背景と作風

本作は、高校の地学部を舞台に、小惑星を発見したいという夢を持つ女子高生・木ノ幡みらと、彼女を取り巻く地学系女子たちの青春物語です。作者の商業デビュー作である読み切り漫画『織姫ナンバー2』をリメイクした作品で、「高校の地学部が舞台」という設定を引き継ぎつつ、登場人物や設定を一新し、少女たちが明確な夢や目標に向かって努力する姿を描いています。

物語全体を通して地球科学（地学）を題材としており、天文学や地質学に関する雑学が豊富に盛り込まれています。また、作中には実在の地学・地理学関連施設が登場することもあり、リアリティを追求した描写も魅力の一つです。物語の開始時点は2017年であり、劇中では日付や時刻、月齢、星空の見え方など、現実の天文現象が細かく反映されています。さらに、劇中では年数が進んでいくという設定も特徴的で、連載の執筆時期に関わらず、1年ごとに年月が経過していきます。

作者のQuroは、自身も高校時代に地学部に所属していましたが、漫画に反映されているのは、部室で友人たちと遊んだりお菓子を食べたりしていた経験であり、自身の地学の知識は連載開始後に調べて描いていると述べています。しかし、元々天文学には興味があり、また、高エネルギー加速器研究機構で広報の仕事をしていた経験から、資料を調べ、多くの人々に正確な情報を伝えることを重視しています。本作を学習[[漫画]]として描いているわけではないとしながらも、様々な分野の学問が繋がっていることを描きたいという思いがあるとのことです。

あらすじ

幼い頃、キャンプに参加した木ノ幡みらは、アオという同年代の子供と出会います。ボーイッシュなアオを男の子と勘違いしたみらは、星空を見ているうちに、自分と同じ名前の星があること、アオという名前の星がないことを知り、いつか二人で新しい小惑星を発見し、アオの名前をつけるという約束を交わして別れます。

1年目（2017年）

時は流れ、2017年、星咲高校に入学したみらは、幼い頃の約束を果たすために天文部に入部しようとしますが、その年から天文部が地質研究会と合併して「地学部」になっていたことを知りショックを受けます。しかし、宇宙から見れば地球の地面も天体の星も同じであるという解釈に納得し、地学部に入部したみらは、そこで約束を交わした真中あおと再会します。アオが女の子であることを知って驚きながらも、みらはアオもまた約束を大切に思っていたことを知ります。そして、先輩である森野真理（モンロー）、猪瀬舞（イノ）、桜井美景（桜）らと共に、みらとあおの地学部での活動が始まります。

当初は互いの活動に知識や関心がなかった天文班と地質班でしたが、学校外での実地調査や天体観測、合宿などを通して互いの分野に詳しくなっていきます。また、みらの幼馴染の鈴矢萌（すず）や、みらの姉で生徒会長の木ノ幡みさも地学部の活動を支援します。みらとあおは、小惑星を発見するという目標を達成するために、顧問の遠藤幸がかつて参加した「きら星チャレンジ」というワークショップへの参加を目指します。

地学部は会報『KiRA KiRA』の発行や文化祭での出展などの活動を通して、新聞部との対抗意識を持ちながらも、互いに協力していく関係を築きます。しかし、3年生の引退やあおの引っ越しなど、様々な問題が部員たちを悩ませます。最終的に、あおはみさの部屋に同居することになり、みらとあおは同居生活と地学部の2年目の活動を始めることになります。

2年目（2018年）

2018年、みらとあおは高校2年生に進級し、真理（モンロー）と美景（桜）が卒業した地学部には、舞（イノ）が2代目部長に就任し、気象学に関心を持つ七海悠（ナナ）と、美景（桜）の妹である桜井千景（チカ）が新入部員として加わります。みらとあおは、小惑星発見の夢を実現するために、沖縄県石垣島で行われる「きら星チャレンジ」の選抜合格を目指します。

努力の結果、みらは選抜に合格しますが、あおは選考漏れとなってしまいます。しかし、諦めきれないあおは独断で石垣島に乗り込み、特例で見学者として認められます。3日間の日程で、みらは自分たちの手が本物の小惑星に届いたという実感を得て、地学の可能性と、将来の夢について考えを深めます。

主要登場人物

地学部とその関係者

木ノ幡みら（このはたみら）/ みら
声 - 高柳知葉
主人公の一人。天真爛漫で、地学部のムードメーカー。
真中あお（まなかあお）/ あお
声 - 山口愛
もう一人の主人公。口数が少ないが、みらのことを大切に思っている。
猪瀬舞（いのせまい）/ イノ
声 - 指出毬亜
地質班の2年生。人懐っこい性格で、地図が好き。
桜井美景（さくらいみかげ）/ 桜（さくら）
声 - 東山奈央
地質班の3年生。地質学の知識が豊富だが、不器用な一面も。
森野真理（もりのまり）/ モンロー
声 - 上坂すみれ
天文班の3年生。おっとりとした性格で、宇宙飛行士を夢見ている。
鈴矢萌（すずやもえ）/ すず
声 - 上田麗奈
みらの幼馴染で、パン屋の看板娘。地学部の活動を支援している。
遠藤幸（えんどうゆき）
声 - Lynn|lynn
地学部の顧問。元「きら星チャレンジ」参加者。
七海悠（ななみゆう）/ ナナ
声 - 諸星すみれ
劇中2年目から登場する新入部員。気象学に関心がある。
桜井千景（さくらいちかげ）/ チカ
声 - 小原好美
劇中2年目から登場する新入部員。オカルトに詳しい。

新聞部

伊部小百合（いべさゆり）/ イヴ
声 - 古賀葵
新聞部の2年生。男性的な口調で話す。
宇佐美綾乃（うさみあやの）
声 - 中島愛
新聞部の1年生。マイペースな性格。

その他

木ノ幡みさ（このはたみさ）
声 - 渕上舞
みらの姉で生徒会長。

設定

星咲高校地学部

物語の主な舞台となる地学部は、天文部と地質研究会が合併してできた部活です。部室は古い文化部棟にあり、部員たちはニックネームで呼び合う親しい関係です。地学部では会報『KiRA KiRA』を発行しており、部員たちの活動や思いが綴られています。

登場人物が訪れる場所

作中には、茨城県つくば市にある地質標本館や筑波宇宙センター、地図と測量の科学館などの実在の施設が登場します。また、沖縄県石垣島ではVERA石垣島観測局や石垣島天文台などの天文施設が描かれています。

書誌情報

『恋する小惑星』は、芳文社から「まんがタイムKRコミックス」として全6巻が刊行されています。単行本には、各話のサブタイトルや、鈴矢萌（すず）を主人公にした書き下ろしのおまけ漫画「Suzu's Research」が掲載されています。

テレビアニメ

2020年1月から3月にかけて、テレビアニメが放送されました。アニメ版では、原作の1巻から4巻までの内容が描かれており、細かな設定や演出、作画にリアリティを追求しています。また、各話のアイキャッチは、登場人物の誕生星座をモチーフにしたものとなっています。

アニメーション制作

アニメーション制作は動画工房が担当しました。監督は平牧大輔、シリーズ構成は山田由香が務めています。また、制作にはアストロアーツ/星ナビ、ビクセン、国立天文台などの団体が協力しています。

主題歌

オープニングテーマは東山奈央が歌う「歩いていこう!」、エンディングテーマは鈴木みのりが歌う「夜空」です。また、挿入歌として高柳知葉が歌う「あの星の向こうに」、山口愛が歌う「君と見た星」があります。

Webラジオ

テレビアニメ放送時には、木ノ幡みら役の高柳知葉と真中あお役の山口愛によるWebラジオ「『恋する小惑星』★みらとあおの KiRA KiRADIO◆」が配信されました。

タイアップ

『恋する小惑星』は、NPO法人地学オリンピック日本委員会、ビクセン、アストロアーツ/星ナビ、誠文堂新光社、先端加速器科学技術推進協議会、宙ツーリズム推進協議会、アニメツーリズム協会など、様々な団体とコラボレーションしています。また、叡山電鉄では、本作のヘッドマークを掲出した電車の運行や、コラボポスターの掲出などのイベントが実施されています。

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