救い主

救い主（すくいぬし）

救い主は、聖書の中心的人物であるイエス・キリストに付けられた重要な称号です。この表現は、旧約聖書から新約聖書にかけて、神による救済の計画を象徴しています。

旧約聖書における救い主

旧約聖書においては、「救い主」という称号が複数の箇所で言及されています。たとえば、「サムエル記」や「詩篇」、さらには「エレミヤ書」などで見られますが、これらは何らかの神の行為に関連して使われていることが特徴です。

「救い主」という言葉自体は、ヘブライ語では名詞ではなく分詞として用いられ、神が自らの民に対して示す救いの行為を意味します。特定の個人を指すものではなく、神の意志と行動に基づいた概念と理解することができます。この理解は、救助者として示される様々な人々をも含んでおり、たとえば士師記やネヘミヤ記にもその例があります。これらは神が選ばれた者を通じて、民を救う姿の表現です。

新約聖書における救い主

新約聖書では、救い主の概念がより明確に描かれています。神は御子イエス・キリストを通じて人々を救う存在として称賛されています。ルカによる福音書において、天使はイエスの誕生を「救い主」として世に告げています（ルカ2:11）。また、マタイによる福音書でも、イエスは「自分の民を罪から救うために来た」と記されています（マタ1:21）。

イエスは、「世の救い主」と呼ばれ、その通り名は全人類に対して広がる救いの普遍性を示しています。救いが特定の民族や地域に限られず、すべての人々に関わるものであることが強調されています。イエスは、失われた者を捜し救うために来たと語り（ルカ19:10）、信者のために再び現れることが約束されています（ピリ3:20）。また、新約聖書においては、「救い主」という言葉は24回使用されており、この役割が非常に重要であることを示しています。

ソーテールの概念

ギリシア語では「ソーテール」（σωτὴρ）という言葉があり、これは神の名称としてだけでなく、治世者や哲学者、宗教的存在をも指す幅広い意味を持っています。この言葉は医療の神アスクレーピオスなどにも使われ、ローマ帝国時代では皇帝と同義に用いられることがありました。特に、ハドリアヌス帝の碑文にも「世の救い主」という言葉が見られるため、神的な称号としての用法が広がったことがわかります。

しかしながら、「ソーテール」は旧約時代からの用語であり、ヘレニズム文化に依存するものではありません。新約聖書ではこの言葉は純粋に神そしてイエスを指し、一般的な人間には適用されません。したがって、キリスト教ではこの呼称は旧約聖書に記された救い主としてのイエスに帰属するものと理解されています。

結論

救い主という称号は、聖書を通じて神の救いの計画を明示するものです。イエス・キリストはその中心的人物であり、彼の役割は信者にとって決定的な意味を持つものであります。救い主の概念は、神の存在とその民を救う意志の象徴であり、信仰の根幹を成す要素となっています。

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