教養

教養とは何か？

教養とは、個人の人格形成や学習に深く結びついた、知識や行動様式を指します。学問、芸術、精神修養といった教育や文化活動もその一部と言えるでしょう。単なる知識の蓄積ではなく、それらが人格や知性、創造力と調和した状態を示す言葉です。

教養の多様な解釈

「教養」の捉え方は時代や文化によって異なります。古代ギリシャ語の「パイドイア」は、教育係による指導を通して子供に身についたものを意味し、英語の「culture」は「耕されたもの」、ドイツ語の「Bildung」は「創造されたもの」を意味するなど、それぞれの言葉に文化的な背景が反映されています。

西洋では、リベラル・アーツに相当する概念として理解されることもありますが、日本では大学専門課程以前の一般的な基礎知識を指すことが多く、「一般教養（パンキョウ）」という言葉が広く用いられています。

日常会話では、「あの人は教養がある」といった表現で、洗練された会話や振る舞い、高い常識を指す場合が多いです。しかし、教養は単なる知識の豊富さ（博識）だけでなく、豊かな人間性を伴うものです。知識の多少に関わらず、学び続ける姿勢が重要です。

教養の変遷

教養の内容は、時代や社会の変化と共に変遷します。その成立には、社会共通の価値観の存在が不可欠です。

近代以前

ヨーロッパの上流階級では、洗練された社交能力と、それに必要な知識・教養が重視されました。カスティリオーネの『宮廷人』はその規範と言えるでしょう。中国では科挙制度を背景に、四書五経や漢詩の素養が求められ、文人画なども嗜まれました。日本でも、古代中国の影響を受け、四書五経や漢詩、琴棋書画が重視され、やがて和歌などの独自の文化も加わっていきました。

近代以降

近代以降は、出版技術の発達、大衆の教育機会の拡大、マスメディアの普及などにより、教養を身につける機会が増えました。

明治時代以降の日本

明治時代初期には、欧米の文物、特に科学技術の学習が優先され、日本の伝統的な教養は軽視されました。しかし、20世紀初頭には、「国民の教養」といった書籍も出版され、教育法や人格形成という観点からも「教養」が捉えられるようになりました。旧制高校では、読書による人格形成を目指す教養主義が盛んになり、西洋哲学や文芸書が必読書となりました。総合雑誌も学生文化に大きな影響を与えました。夏目漱石とその周辺の知識人たちは、伝統文化と近代思想を融合させた教養人として知られています。戦後には大学の教養課程が設置され、総合雑誌の読書が学生文化の一要素となりましたが、やがて一般教養は専門課程前の必修科目という扱いへと変化していきました。

現代社会における教養

1960年代以降、高等教育のマス化、ビジネス技術の導入、社会構造の変化などにより、従来の教養主義は衰退していきました。「適応」「超越」「自省」という文化の作用のうち、「適応」が肥大化し、「超越」「自省」が衰退したと言えるかもしれません。

未来の教養

対話型講義の普及、哲学や倫理の重視などを通して、「自分自身で考える」力を養うことが、一般教養の復興につながる可能性があります。それは新たな知の創造や美徳の再生への期待を秘めていると言えるでしょう。また、大学院や博士課程において、より高度な教養が求められるようになっていると言えるかもしれません。

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