日本作家クラブ

一般社団法人日本作家クラブは、日本の文筆家が集う団体です。その活動は、昭和24年（1949年）に野村胡堂氏らを中心に設立された「捕物作家クラブ」に始まります。昭和35年（1960年）に現在の名称である「日本作家クラブ」へ改称し、平成22年（2010年）には一般社団法人として登記されました。現在の理事長は竹内博氏が務めています。

創設当初から、「文壇における派閥的な考えを一切排除する」という理念を掲げて活動を展開してきました。この理念は、当時の文学界で影響力を持っていた「純文学至上主義」とは距離を置く姿勢を示すものであり、より幅広い層に読まれる大衆小説や歴史小説を手掛ける作家たちの拠り所となりました。

設立時の中心的なメンバーには、創設者の野村胡堂氏のほか、山手樹一郎氏、江戸川乱歩氏、川口松太郎氏、海音寺潮五郎氏、子母澤寛氏、長谷川伸氏、山岡荘八氏、横溝正史氏、吉川英治氏といった、日本を代表する大衆文学の大家たちが名を連ねました。彼らは、それぞれの分野で多くの読者を獲得し、文学の多様性を支えました。

団体の設立には、探偵作家として知られる江戸川乱歩氏が語る興味深いエピソードがあります。昭和22年（1947年）に探偵作家クラブ（現在の日本推理作家協会）が発足する際、乱歩氏は、自身のように捕物帳も執筆する時代小説作家も参加させるべきだと主張しました。しかし、発起人の中にはこれに反対する意見があり、現代の探偵小説作家のみで組織が立ち上げられることになりました。この経緯を踏まえ、乱歩氏は、探偵作家でありながら捕物帳も手掛けていた横溝正史氏や城昌幸氏に対し、探偵作家クラブとは別の組織として捕物作家クラブを結成することを提案しました。乱歩氏自身は時代小説の著作はありませんでしたが、こうした背景から、創立発起人の一人として名を連ね、団体の会員となりました。

団体の歴史の中では、組織の変動もありました。昭和63年（1988年）には、残念ながら組織の分裂が発生しました。この時、半村良氏、豊田行二氏、勝目梓氏、志茂田景樹氏など、多くの作家が日本文芸家クラブなど他の文学団体へと移籍しました。

現在、日本作家クラブは様々な文学活動を推進しています。設立65周年を迎えた平成26年（2014年）には、創設者である野村胡堂氏の功績を称え、「野村胡堂文学賞」を創設しました。その他にも、広く文化や文学を奨励するための「あらえびす文化賞」、「文芸賞」、「随筆賞」といった賞を設けています。

団体の運営を支えてきた歴代の会長や理事長には、創設者の野村胡堂氏を筆頭に、山手樹一郎氏、陣出達朗氏、小林秀美氏、細島喜美氏、大林清氏、木屋進氏、市村美就夫氏、若山三郎氏、吉村卓三氏、中村信也氏といった方々がいます。現在の理事長である竹内博氏に至るまで、それぞれの時代において団体の発展に貢献してきました。

日本作家クラブへの入会を希望する場合、会員1名と理事1名の推薦を得ることが必要とされています。

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