早繰り銀

早繰り銀：積極的な攻めを特徴とする将棋戦法

早繰り銀は、将棋の戦法の一つで、主に相矢倉、角換わり、相掛かりといった局面で用いられる作戦です。特徴は、右銀を早期に4六や3七などに繰り出し、敵陣に攻め込む点にあります。▲4六銀から▲3五歩と攻める展開が一般的です。

各局面における早繰り銀

矢倉

早繰り銀は、急戦矢倉において古くから用いられてきました。詳細な戦術は、急戦矢倉の項を参照ください。

角換わり

角換わりでは、早繰り銀は棒銀に対して有効とされていますが、腰掛け銀に対しては弱点があります。

後手が△5四角と自陣に角を据える定跡に対し、早繰り銀は△7三銀～△6四銀と対応することで、5四の角の守りを固めつつ反撃に転じることが可能です。このため、従来の棒銀は勝率低下、減少へとつながっています。

一方、腰掛け銀に対して早繰り銀を用いる場合、後手は△5四銀～△4四歩から△4五歩と銀を追い払うなど、効果的な受けが可能です。そのため、素早い出足が求められますが、それでも後手の適切な対応によって先手の攻めが封じられる可能性があります。例えば、▲3五歩△同歩▲同銀に対しては△6五歩や△4五銀といった選択肢があり、後手は有利に戦いを進めることができます。

文献『イメージと読みの将棋観2』（2010年、日本将棋連盟）では、具体的な局面例を挙げ、早繰り銀の成功には▲7九玉と△9四歩の交換が必要であると指摘しています。また、後手の継ぎ歩攻めなども考慮する必要があり、先手は複雑な局面を捌ききることが求められます。

△3三金型

角換わり後手番における△3三金型は、通常は銀が配置される場所に金将を配置する変則的な早繰り銀です。2020年頃にプロ棋界で流行しましたが、実際には1940年代に間宮久夢斎が採用していたことが判明しています。千葉幸生はこれを「サザンハヤクリ」と呼んでいます。

この戦法の特徴は、防御側の銀を動かさず、金将を△3三に配置することで飛車先交換を防ぎ、銀の出足を通常よりも2手早くする点です。先手の▲7八金を省略して▲6九金のままで棒銀にいく作戦への対抗策として有効です。しかし、後手も△7四歩からの反撃など、対策を講じる必要があります。

対後手一手損角換わり

腰掛け銀に対して弱点があった早繰り銀ですが、後手番一手損角換わりでは、後手の手が遅れるため、通常の角換わりと比べて銀を追われにくいという利点があります。そのため、一手損を咎める急戦手段として主流となっています。居玉のまま攻めると、飛車を受ける局面が生じるため、▲6八玉と玉を移動してから攻めるのが重要です。後手は腰掛け銀と△8五歩を急ぎ、早繰り銀への対策を講じる必要があります。

相掛かり

相掛かりでは、中原誠九段が得意とした中原流早繰り銀があります。3筋を捨てて▲4六銀と上がるのが特徴で、攻め筋が広く主導権を握りやすいとされています。ただし、現在主流となっている2八飛型棒銀に比べると、採用率は低いです。

中飛車早繰り銀

左銀を6八～5七～4六と繰り出す中飛車を「早繰り銀中飛車」と呼びます。大山康晴十五世名人などが愛用していました。原始中飛車と比べて持久戦への対応が容易です。

まとめ

早繰り銀は、その積極性から魅力的な戦法ですが、相手の手筋や局面によっては有効性が大きく変わることを理解しておく必要があります。それぞれの局面において、適切な対応と対策を講じることで、勝利への道筋を切り開くことが可能です。

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