腰掛け銀

腰掛け銀：将棋における多様な戦術の可能性

腰掛け銀は、将棋の序盤において、先手が5六の地点、後手が5四の地点に銀を配置する戦法です。5筋に歩があり、その上に銀が位置することから「腰掛け銀」と呼ばれ、歩越し銀の一種に分類されます。主に相居飛車戦、特に角換わりで頻繁に用いられ、その相性は抜群です。

角換わり腰掛け銀：定跡と発展

角換わりにおいて、腰掛け銀は重要な戦型です。角交換後、5筋の歩を突かずに腰掛け銀を構えることで、飛車先を守りつつ、柔軟な展開を目指します。後手は棒銀、右玉、または相腰掛け銀で対抗します。

この戦型では、▲7七銀～▲7八金と矢倉のような形になるものの、角が持ち駒であるため、陣形に制約が生じ、玉形は堅牢になりません。そのため、攻めの反動が大きくなる点が特徴です。

角換わり腰掛け銀の代表的な定跡に木村定跡があります。昭和30年代に生まれたこの定跡は、▲8八玉△2二玉の交換を経て先手が攻め込む展開について、詳細な研究がなされ、完成された定跡として知られています。しかし、先手のみが▲8八玉とする場合、後手には木村定跡の逆バージョンがあり、後手優勢となります。そのため、先手は▲7九玉型からの升田定跡が研究されました。

その後、角換わりは千日手になる変化が多く一時停滞しましたが、飛車先の歩を保留し、右[[四間飛車]]に転じる打開策が発見され、新たな展開が研究されました。升田流が再び主流となりましたが、富岡英作が考案した富岡流によって先手必勝が示され、後手は7三桂を保留するなど、対策を講じる必要が出てきました。

相掛かり腰掛け銀：変化と展開

相掛かりにおいても、腰掛け銀は用いられます。かつては駅馬車定跡のような激しい展開が主流でしたが、現在は玉形を整え、仕掛けのチャンスを伺う展開が一般的です。「相腰掛け銀」は、この相掛かり腰掛け銀の略称、あるいはより広義には、先手と後手の銀が5筋で対抗する形を指す用語として用いられます。

その他の戦型における腰掛け銀

腰掛け銀は、角換わりや相掛かり以外にも、様々な戦型で用いられます。例えば、片方が腰掛け銀に構える展開は、振り飛車模様に対し、飯島流引き角や鳥刺しを狙う駒組みから生じることがあります。また、位取り三間飛車や、居飛車側の位取りにおける腰掛け銀も存在します。

右[[四間飛車]]：振り飛車対策

四間飛車に対して、居飛車側が腰掛け銀から右[[四間飛車]]に転じる戦法があります。狙いは明確でアマチュアに人気がありますが、プロ間では狙いが単調で反動が大きいため、あまり指されません。

駅馬車定跡：歴史に残る激戦

1948年の塚田正夫名人対升田幸三八段戦で生まれた定跡です。相掛かりから、塚田が▲2六飛と浮いたところから、升田が巧みな手順で優勢を築きました。この手順は、金銀が中央に集まっていく様子が映画「駅馬車」のラストシーンに似ていることから、加藤治郎名誉九段によって「駅馬車定跡」と命名されました。

矢倉腰掛け銀：銀矢倉への発展

矢倉戦において腰掛け銀を採用し、4手角で角を活用する戦法があります。その後、金矢倉よりも優れた銀矢倉に組み替えることが多いです。先手の矢倉の組み方が甘いと、後手が腰掛け銀から右[[四間飛車]]に転じ、先手陣を崩壊させる可能性があるため注意が必要です。

まとめ

腰掛け銀は、序盤の駒組みから終盤の攻防まで、様々な局面で活用できる柔軟性の高い戦法です。その特徴を理解し、適切な戦型で活用することで、将棋の戦術的幅を広げることが期待できます。それぞれの戦型における詳細な定跡や、最新の研究成果を学ぶことで、さらに深い理解へと繋がるでしょう。

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