木槌の誘い

『木槌の誘い』は、水木しげるが1998年から1999年にかけて『ビッグゴールド』で連載した漫画作品です。この作品は、水木しげるが長年培ってきた妖怪研究の集大成とも言えるもので、広島県三次市に伝わる古文書『稲生物怪録』をベースに、独自の解釈を加えて描かれています。

物語の舞台は、今から約250年前の備後国三次。主人公は、この地に生まれた稲生平太郎という若者です。平太郎は、深夜の度胸試しで「比熊山の祟り石」を傷つけてしまったことから、彼の家には様々な怪異が頻発し、多くの妖怪が現れるようになります。噂を聞きつけた人々が助けに訪れますが、皆恐ろしさのあまり逃げ帰ってしまいます。しかし、生まれつき豪胆な平太郎だけは、これらの怪異に全く動じません。ついには、妖怪の親玉である「山ン本五郎左衛門」が現れ、平太郎に木槌を授けます。

物語は、水木しげる自身と、友人の荒俣宏（作中ではアリャマタコリャマタという名で登場）が霊魂となり、妖怪の真実を追い求める展開へと進みます。彼らは、国前寺に残された木槌、葦嶽山の日本ピラミッド、縄文時代の精霊信仰など、様々な要素を考察しながら、妖怪のルーツに迫っていきます。作中では、稲生平太郎、山ン本五郎左衛門など『稲生物怪録』に登場する人物や妖怪に加え、水木しげるの背後霊として、のんのんばあや月よりの使者、荒俣宏の背後霊として、平田篤胤、タコ型の宇宙人、ノンキなトウサンなどが登場します。これらのキャラクターが、物語に深みと面白さを加えています。

この作品は、単行本として『木槌の誘い 1』と『木槌の誘い 2』がビッグコミックスゴールドから出版されたほか、小学館文庫版、講談社〈水木しげる漫画大全集〉版も発売されています。

『木槌の誘い』は、水木しげるが長年温めてきた妖怪への探求心を形にした作品であり、読者はこの作品を通して、妖怪の奥深さと、水木しげるの独特な世界観を堪能することができるでしょう。

この作品は、単に妖怪を描いた漫画としてだけでなく、歴史や文化、そして人間の心の奥底にあるものまでをも映し出す、非常に奥深い作品です。水木しげるの卓越したストーリーテリングと、緻密な画力が融合した本作は、漫画ファンだけでなく、妖怪や歴史に興味がある人にとっても、必読の作品と言えるでしょう。

主な登場人物

水木しげる: 自身の背後霊の力を借り、妖怪の真実を突き止めようと霊魂になります。
アリャマタコリャマタ（荒俣宏）: 水木の友人であり、以前から稲生物怪録を研究していました。水木と共に霊魂となります。
稲生平太郎: 稲生物怪録に登場する武士。16歳で家を継ぎますが、家に次々と妖怪が現れます。
山ン本五郎左衛門: 稲生物怪録に登場する妖怪の親玉。平太郎に感服し木槌を授け、後半は水木の背後霊として登場します。
平田篤胤: 荒俣宏が尊敬する人物で、生前稲生物怪録の研究をしていました。荒俣の背後霊として登場します。
のんのんばあ: 水木が幼少時代に懇意にしていたお婆さん。水木の背後霊として登場します。
月よりの使者: 水木の背後霊。
宇宙人: タコ型の宇宙人で、荒俣の背後霊です。
ノンキなトウサン: 荒俣の背後霊。

関連事項

稲生物怪録

単行本情報

『木槌の誘い 1』（ビッグコミックスゴールド、1998年9月、ISBN 4-09-188101-7）
『木槌の誘い 2』（ビッグコミックスゴールド、1999年3月、ISBN 4-09-188102-5）
『木槌の誘い』（小学館文庫、2001年12月、ISBN 4-09-192614-2）
『木槌の誘い』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2014年8月、ISBN 978-4-06-377529-7)

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