札幌市資料館

札幌市資料館は、北海道札幌市中央区に位置する、札幌市が管理運営する資料館です。この建物は、かつて札幌控訴院の庁舎として使用されていたもので、大正末期の1926年に建設されました。その後、札幌高等裁判所としても利用され、1973年に裁判所が移転した後、資料館として開館しました。

資料館内には、大正末から昭和戦前期の刑事法廷を復元した「刑事法廷展示室」があり、当時の法廷の様子を間近に見ることができます。また、札幌市の歴史や文化に関する展示も充実しており、街の変遷を学ぶことができます。さらに、市民向けのミニギャラリーが6室設けられており、絵画、写真、工芸など、幅広いジャンルの作品が展示され、市民の文化活動の発表の場としても活用されています。

この建物は、建築物としての価値も高く評価されています。1997年に国の登録有形文化財に登録され、2020年には「旧札幌控訴院庁舎」および「附 門」として国の重要文化財に指定されました。建物は、外壁に札幌軟石を使用し、内部はレンガを積み上げた組積造で、一部に鉄筋コンクリート構造も取り入れた、新旧の建築技術が融合した珍しい形式です。特に、外壁に使用されている札幌軟石は、現在ではほとんど採石されていない貴重なものであり、この資料館は現存する市内最大の札幌軟石建築物として知られています。

開館当初は、同じ建物内に「北海道文学館」と「札幌市考古資料室」が併設されていましたが、それぞれ移転しました。北海道文学館は1979年に開館し、北海道ゆかりの作家たちの資料を展示していましたが、1995年に北海道立文学館が開館したのに伴い移転しました。札幌市考古資料室は、1977年に開設され、札幌市内の遺跡から発掘された資料などを展示していましたが、2006年に旧豊水小学校跡に移転し、「札幌市文化資料室」として再編されました。

資料館は、2006年に大正時代の控訴院の法廷が復元されたことを機に、内部を大幅に改装しました。現在は、民間の指定管理者が管理・運営を行っており、市民が気軽に利用できる施設として親しまれています。また、夜間にはライトアップが行われ、昼間とは異なる幻想的な雰囲気を楽しむことができます。

札幌市資料館は、大通公園の西端に位置し、東端のさっぽろテレビ塔と対をなすように、公園の景観を締めくくる存在です。歴史的な建築物としての価値だけでなく、札幌の歴史文化を学び、市民の文化活動を育む場として、重要な役割を担っています。この資料館は、札幌の歴史と文化、そして建築技術の粋を伝える貴重な存在であり、訪れる人々に深い感動と学びを提供しています。

この建物は、札幌控訴院の庁舎として建設され、その後、札幌高等裁判所としても使われました。1973年に裁判所が移転するまで、この建物は司法の場として重要な役割を果たしました。全国に8箇所建てられた控訴院の庁舎の中で、現存するのは、ここ札幌市資料館と、名古屋市市政資料館となっている旧名古屋控訴院の2つのみです。

建設当初、財政難や関東大震災の影響を受け、建設工事は難航しました。設計変更や一時中断を経て、1926年にようやく完成しました。この建物は、司法省会計課が設計し、浜野三郎が担当したと推定されています。技師長は山下啓次郎が務め、実施の細部設計は森兵作、朝倉益也、森久太郎らが担当しました。国の重要文化財指定は、「司法省の盛期の設計を伝える」と高く評価されています。

札幌高等裁判所の新築移転に伴い、1970年に国と市が土地を交換しました。当初、この建物は解体される予定でしたが、北海道文化財保護協会などからの陳情により保存が決定しました。建物の所有権は国から札幌市に移管され、1973年に資料館として開館しました。この保存決定は、歴史的建造物を後世に残すことの重要性を再認識させる出来事でした。

札幌市資料館は、歴史的な建造物であるだけでなく、札幌市民の文化活動を支える拠点でもあります。市民ギャラリーでは、様々なジャンルの作品が展示され、市民の創造性を刺激しています。また、大正時代の法廷を復元した「刑事法廷展示室」は、歴史を身近に感じられる貴重な空間です。札幌を訪れる際には、この資料館を訪れ、札幌の歴史と文化に触れてみてはいかがでしょうか。

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