杉石

杉石（すぎせき）

杉石は、欧米ではスギライト、ルブライト、ローヤルアゼールなどと呼ばれ、ケイ酸塩鉱物の一種です。
その化学組成は (K,Na)(Na,H2O)2(Fe3+,Ca,Na,Ti,Fe,Mn)2(Al,Fe3+)Li2Si12O30 で、結晶系は六方晶系に属します。
この鉱物は大隅石グループに分類され、日本では1944年に愛媛県岩城島で発見されました。当時の研究者である杉健一らによって採取され、その後1974年に国際鉱物学連合により新鉱物として登録されました。名前は岩石学者の村上允英の師である杉にちなんで命名されています。

産出地

杉石は、主に南アフリカ共和国ケープ州のウェッセルズ鉱山で多く採取されますが、日本の愛媛県やイタリア、オーストラリア、インド、中央アジアの天山山脈などでも見られます。
特に日本では、岩城島と砥部町の古宮鉱山が著名な産地として知られています。

性質・特徴

この鉱物のモース硬度は5.5から6.5で、比重は2.74から2.79です。初めて発見された日本産の杉石は、うぐいす色でしたが、宝石として評価されるのは主にピンクや紫系の色合いです。紫色はマンガンによるもので、南アフリカ産の中には、マンガンの代わりにアルミニウムが優位に存在するものもあり、新しい鉱物としての可能性が指摘されました。実際、2019年にはイタリア産からアルミノ杉石（Aluminosugilite）が新種として記載されています。

用途・加工法

杉石は装飾品として人気があり、特にルース（宝石の原石のこと）としての需要が高まっています。また、チャロアイトやラリマーと共に世界三大ヒーリングストーンの一つとされ、パワーストーン愛好者に広く知られています。

サイド・ストーリー

杉石に関連する話では、村上允英が発見した岩城島の杉石の報告をした広渡文利が、1965年に古宮鉱山で鮮やかな紫色の鉱物を発見したことがあります。その時は成分が特定できなかったが、杉石が新種として記載された後、1981年にその紫色の鉱物が杉石であることが確認されました。
また、村上允英は1983年に櫻井賞を受賞し、1994年にはその業績により勲三等旭日中綬章を受章しました。

南アフリカのウェッセルズ鉱山で発見された杉石は、1978年に誤ってソグド石と認識されたことがあり、後に杉石であると判明しました。そして、最初の発見地である岩城島でもソグド石が発見されることとなりました。

参考文献

• - Nobuhide Murakami et al. (1975). “Sugilite, a new silicate mineral from Iwagi Islet, Southwest Japan”. Mineralogical Journal.
• - Toshio Kato et al. (1975). “Crystal structure of sugilite”. Mineralogical Journal.
• - Pete J. Dunn et al. (1980). “Sugilite, a second occurrence; Wessels Mine, Kalahari manganese field, Republic of South Africa”. The Canadian Mineralogist.

杉石はその美しさと独特の特性により、鉱物愛好家や宝石愛好者の間でさらに注目されている鉱物です。

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