東京クラブ

東京クラブ

東京クラブは、かつて日本の首都である東京都を本拠地として活動していたサッカークラブです。その歴史は、日本のサッカーにおいてプロ化がまだ夢物語であった時代に、大胆な構想のもとに誕生した試みとして特筆されます。

設立の経緯と構想

クラブの起源は、第二次世界大戦終結から間もない1949年頃に遡ります。当時、後楽園競輪場が開設された直後の時期に、読売新聞社の社長であった正力松太郎氏が中心となり、プロサッカークラブの創設という壮大な計画が持ち上がりました。

正力氏は、単なるクラブ創設に留まらず、後楽園競輪場の非開催期間を利用してプロサッカーの試合を開催し、さらにその試合結果を対象とした「トトカルチョ」（サッカーくじ）を導入することで、新たなエンターテインメントおよび収益事業とする構想を抱いていました。この計画を実現するため、正力氏は当時、日立製作所で選手として活躍していた松永碩氏を招き、チーム編成への協力を依頼しました。

松永氏は、会談の場でプロチームとしての編成には同意しませんでしたが、国内の有力な選手たちを集め、アマチュアの強豪チームを作り上げることは約束しました。これが、後の東京クラブの基盤となります。

活動と成果

こうして編成されたチームは、1955年に読売新聞社の後援のもと開催された第1回全国都市対抗サッカー選手権大会に、「東京クラブ」として出場しました。

チームは松永氏を中心に、当時の東京の大学出身選手らを主体として構成されていました。彼らはこの大会で他のチームを圧倒する実力を見せつけ、初代王者としての栄誉を獲得します。さらに翌年もその勢いを維持し、見事連覇を達成するなど、短期間ながらもその存在感を示しました。

短命に終わった理由

都市対抗選手権での輝かしい成績にもかかわらず、東京クラブの活動は残念ながら長続きしませんでした。

その主な要因として、正力氏が目指したプロ化という前提に対し、当時の日本のサッカー界からの十分な理解や協力が得られなかったことが挙げられます。また、様々な経緯で集められた選手たちの間で、チームとしての結束力が十分に育まれなかったことも、活動継続の困難さにつながりました。

これらの理由が重なり、東京クラブは結成からわずか数年でその歴史に幕を下ろし、解散することとなりました。

その後のプロ化への動き

東京クラブの解散後も、正力氏の日本サッカープロ化への情熱は衰えることはありませんでした。彼は日本サッカー協会（当時は日本蹴球協会）に対し、「読売新聞社と後楽園スタヂアムがそれぞれプロチームを立ち上げ、全国を巡って興行を行う」という、さらに踏み込んだプロリーグ構想とも言える提案を行います。

しかし、この構想も当時の日本のサッカー競技レベルがプロ化には時期尚早と見なされたことや、日本サッカー協会が登録されていた日本体育協会の定める厳しいアマチュア規定によって、プロ選手の登録が認められなかったことなど、複数の障壁により実現には至りませんでした。

正力氏はその後も諦めず、1969年には「将来的なプロ化」を目標に掲げた読売サッカークラブを設立します。このクラブが後に日本プロサッカーリーグ（Jリーグ）の盟主の一つである東京ヴェルディへと発展していくことになります。しかし、日本国内で正式にプロ選手が誕生し、活動できる環境が整うのは、日本体育協会の規定が改正されアマチュア規定が撤廃される1986年まで待たねばなりませんでした。

東京クラブは短命に終わったものの、日本のサッカー界におけるプロ化への初期の試みであり、後の読売サッカークラブ創設へと繋がる重要な一歩として、その名を残しています。

歴代所属が伝えられる選手

クリストファー・マクドナルド
松永碩
加納孝
岩淵功
大埜正雄
長沼健

参考文献

* 牛木素吉郎「大正力とサッカー」『クラブサッカーの始祖鳥--読売クラブ〜東京ヴェルディの40年』（東京ヴェルディ1969フットボールクラブ株式会社、2010年）

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