東陽監査法人

東陽監査法人の歩みと現状：準大手監査法人の挑戦と変革

東陽監査法人は、日本の準大手監査法人として長い歴史を持つ。かつては準大手監査法人の中で最大規模を誇り、大手監査法人の寡占体制が確立した1993年においても、証券取引法監査クライアント数で第6位にランクインするなど、その存在感を示してきた。

設立以来、数々の合併を経て規模を拡大してきた東陽監査法人は、国際的な会計事務所との提携関係にも注目が集まる。2003年からホーワスインターナショナル（現クロウ・グローバル）と提携した後、2011年にはBDOインターナショナルへ移行。三優監査法人との合弁会社設立など、BDOとの連携を強化した。しかし、2018年にはBDOとの提携を解消し、再びクロウ・グローバルと提携するという大きな転換を図っている。この決断は、当時クロウ・グローバルと提携していた優成監査法人が吸収合併されたことと無関係ではないだろう。

東陽監査法人の特徴として、大手・準大手監査法人の中でも際立って高い非常勤比率が挙げられる。繁忙期のみ勤務する職員が多く、人員数は準大手では太陽監査法人に次ぐ規模を誇る一方、会計士比率も高い。2015年度の業務収入は39億円にのぼるが、そのほとんどが保証業務によるものであり、非監査業務の割合は準大手監査法人の中でも最低レベルである。かつてはコンサルティングや税務サービスを提供する関連会社とともに「東陽グループ」を形成していたが、BDOとの提携を機にその体制は変化している。

2018年に理事長に就任した佐山正則氏は、金融庁や日本公認会計士協会の意向を踏まえ、大胆な構造改革に着手した。非常勤会計士の常勤化を進め、2020年度までにその割合を37％から22％へと大幅に削減。将来的な業界再編を見据え、2023年には仰星監査法人との合併協議を進めるなど、積極的な姿勢を示していた。しかし、2023年6月から始まった公認会計士・監査審査会による異例の長期検査や、佐山氏の方針を巡る内部対立、そして訴訟問題など、様々な困難に見舞われた。結果、佐山氏は2023年8月に理事長を退任、2024年2月には理事も辞任することとなった。

東陽監査法人は、上場企業80社を含む230社をクライアントに持ち、東京、名古屋、大阪に拠点を置く。2024年6月30日時点の従業員数は社員54名、職員297名（公認会計士177名を含む）で、合計351名にのぼる（非常勤を含む）。

歴史を振り返ると、1971年に監査法人日東監査事務所として設立され、1981年に虎ノ門共同事務所との合併を経て東陽監査法人に改称。その後も西村会計事務所や東都監査法人との合併などを経て、現在の規模に成長を遂げた。

しかし、東陽監査法人の歴史には、インサイダー取引や監査証明をめぐる訴訟といった暗い影も存在する。2010年には所属会計士のインサイダー取引が発覚し、課徴金納付処分を受け、2018年には株式会社プロデュースの監査をめぐる訴訟で約6億円の損害賠償判決が確定した。これらの出来事は、監査法人のガバナンスや倫理観に対する社会の厳しい目を改めて認識させるものとなっている。

現在、東陽監査法人は、新たな理事長の元、業界再編という大きな波の中で、その将来を模索していると言えるだろう。今後の動向に注目が集まっている。

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