松輸送

松輸送

松輸送（まつゆそう）は、1944年に日本軍が中部太平洋方面への増援部隊を輸送するために実施した作戦のことです。この作戦は、太平洋戦争の戦局が不利に進展していた時期に、特に重要な意義を持っていました。日本帝国政府はマリアナ諸島を絶対国防圏に指定し、そこに配置された守備隊を強化しようとしました。そのため、満州などから多くの地上部隊や軍需物資が「松船団」と呼ばれる護送船団を通じて輸送されました。この作戦には合計11回の護送船団が設定され、アメリカ海軍の潜水艦による妨害にもかかわらず、比較的少ない損害で成功を収めたとされています。特に、松輸送で運ばれた部隊は後のサイパンの戦闘やペリリューの戦闘で重要な役割を果たしました。

背景

1943年9月、日本は絶対国防圏を設定し、戦局の縮小を図る方針を採りました。これにより、25万総トンに及ぶ商船が軍用として徴用され、各地の守備部隊を強化する計画が進められました。しかし、当初はアメリカとの艦隊決戦に重点が置かれ、輸送船の消耗も多く、結果として絶対国防圏の防備は手薄になっていました。

1944年の春、アメリカ軍の急速な侵攻に直面した日本軍は、戦略を見直し、マリアナ諸島およびカロリン諸島に重点を置くこととなりました。日本陸軍は、第31軍を新設し、さまざまな部隊を抽出して増援を決定。これらの部隊を輸送するため、新たに商船が徴用され、毎月10万総トンを目指す計画が策定されました。

作戦計画

1944年3月3日、松輸送の為の艦隊発令が行われ、松1号から松8号までの船団護衛が命じられました。作戦名の「松輸送」は、松竹梅に由来し、西部ニューギニアへの輸送作戦には「竹輸送」の名称が与えられました。この運用は、従来の連合艦隊の管轄から新設された海上護衛総司令部の管轄に移り、大規模な護送船団が編成されることとなります。

特設護衛船団司令部制度が創出され、多数の陸軍部隊が輸送に参加します。陸軍の部隊は、サイパンの守備部隊が強化され、弾薬や物資も供給されました。

作戦経過

東松輸送

松輸送の中心となったのが東松船団です。最初の東松1号船団は、3月4日に出発し、順調に進みました。翌々週にはサイパンに到着し、同時期に東松2号船団も出発。重装備を搭載し、航空支援も受けながら西進し、アメリカの攻撃を受けましたが、一応の成功を収めました。

その後、東松3号、4号、5号船団と続いていきますが、アメリカ潜水艦による攻撃や困難な航海を経ながらも目的地へと向かいます。

作戦結果

松輸送は、5月19日に行われた最終運航をもって完了しました。この作戦に参加した輸送船の損失はわずかであり、特に陸軍の軍用輸送船の沈没は1隻も発生しませんでした。結果として、松輸送は日本側にとって予想以上の成果を上げたものとなりました。

松輸送により、軍部はサイパンの防衛体制を盤石なものと考えましたが、戦局の変化や物資の不足が影響し、後続部隊の運航は多くの損失をもたらしました。この作戦の不確実性を考慮すると、完全な成功とは言えないとの指摘もあります。

影響

松輸送の実施は、日本の海上護送全般に良い影響を与え、作戦中に得た経験が後の運航に活かされました。また、海上護衛の整備が進み、その後の大船団主義へとつながる基盤が築かれることになります。これにより、海軍の護衛力向上や、通信の改善、さらには海上作戦の効率化が進みました。

松輸送は、太平洋戦争における日本軍の輸送作戦の重要な一環として、多くの軍事的意義を持つものとなりました。

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