枕投げ

枕投げとは

枕投げは、複数人で枕を投げ合うシンプルな遊戯です。特別な道具や場所を必要とせず、枕とある程度のスペースがあれば誰でも手軽に楽しめます。特に、学校の宿泊行事などで、子供たちが教師の目を盗んで行うのが定番となっています。枕合戦という呼び名もありますが、これはピローファイト（枕叩き）を指す場合もあります。

枕投げの歴史

枕投げの起源は明確には分かっていません。「枕投げ」という言葉自体も、辞書に掲載されていないことが多く、文献での初出も不明です。しかし、大正時代にはすでに枕投げが行われていたことを示す記録が存在します。

大正時代の記録

1924年（大正13年）に出版された書籍『東京市立小学校児童 震災記念文集 高等科の巻』には、児童の作文に「枕投げ」という言葉が登場します。このことから、少なくとも大正時代には、子供たちの間で枕投げが親しまれていたことが伺えます。

戦時中のエピソード

太平洋戦争末期には、沖縄から学童疎開した対馬丸の生存者が、「船内で枕投げに興じた」と証言しています。また、1943年の京都市の小学校卒業生の体験談にも枕投げが登場します。

団塊世代の思い出

2004年には、西鉄観光バスが団塊世代向けに修学旅行を再現する旅行を企画した際、参加者から最も要望が多かったのが旅館での枕投げでした。2010年には、石川県の温泉旅館が同窓会向けに枕投げ専用枕を用意するなど、宿泊プランに取り入れています。これは、1950年代から70年代の修学旅行で枕投げが盛んに行われていたことの表れでしょう。

枕投げの競技化

近年では、枕投げを競技として行う試みも登場しています。大規模なイベントなどでは、独自のルールが設けられることもあります。

温泉旅館まくら投げ世界選手権

2001年には、兵庫県有馬温泉などで「温泉旅館まくら投げ世界選手権」が開催されました。この大会では、枕を砲丸投げのように投げて飛距離を競うという、ユニークなルールが採用されました。ただし、これは一般的な枕投げのイメージとは異なり、競技としての要素が強いものでした。

全日本まくら投げ大会in伊東温泉

2013年からは、静岡県伊東温泉で「全日本まくら投げ大会in伊東温泉」が開催されています。この大会は、枕投げをスポーツとして捉え、8対8のドッジボール形式で行われます。参加者は温泉浴衣を着用し、クラッシュラテックス製の専用枕を使用します。大将、アタッカー、リベロ、サポーターといった役割分担があり、布団を盾にして防御したり、「先生が来たぞ〜」コールで試合を中断して枕を回収したりするなど、ユニークなルールが設けられています。この伊東温泉発祥の公式ルールは全国に広がり、「スポーツ枕投げ」として親しまれています。

スポーツ枕投げの発展

スポーツ枕投げは、競技専用の枕や浴衣が開発され、テレビ番組や企業のPRにも活用されています。

受賞

スポーツ枕投げの一連の広報宣伝活動は、世界的に権威のある広告賞「アドフェスト（アジア太平洋広告祭）２０２１」で高く評価され、「ロータス・ルーツ」部門の最優秀賞を受賞しました。これは、日本の地域文化が世界に認められたことを示す快挙と言えるでしょう。

枕投げは、単なる子供の遊びから、スポーツとして、また地域文化の象徴として、新たな展開を見せています。今後、枕投げがどのように進化していくのか、注目されます。

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