柚月裕子

柚月裕子（ゆづき ゆうこ）は、1968年5月12日生まれ、岩手県釜石市出身の日本の小説家、推理作家です。現在は山形県山形市に在住し、釜石応援ふるさと大使も務めています。

生い立ちと作家への道

柚月は、幼少期から転勤が多く、小学校を3度変わるなど、岩手県内を転々とする生活を送りました。少女時代にはシャーロック・ホームズシリーズに親しみ、物語の世界に魅了されました。高校卒業後、父親の転勤に伴い山形県山形市へ移り住み、結婚後も同地に定住。2児を育てながら、子育てが一段落した頃、山形市で開かれた「小説家になろう講座」に参加したことが、作家への道を開くきっかけとなりました。

講座では、ベテラン作家や編集者の話を聞き、刺激を受けた柚月は、地元のタウン誌で取材原稿を執筆する中で、自身の文章が読まれる喜びを知り、小説の執筆を始めました。講師であった志水辰夫に短編を評価されたことが大きな自信となり、山形新聞社主催の「山新文学賞」に応募。2007年、「待ち人」が入選を果たしました。この受賞を機に、2008年、40歳で『臨床真理』が第7回『[[このミステリーがすごい!』大賞]]を受賞し、作家デビューを果たしました。

作風と代表作

柚月の作品は、人間の心理を深く掘り下げ、社会の暗部を抉るような描写が特徴です。特に、暴力団や警察組織といった、男性社会における権力や葛藤を描いた作品に定評があります。また、佐方貞人シリーズでは、主人公の検事を広島出身に設定するなど、作品のリアリティを追求する姿勢も高く評価されています。

代表作の一つである『孤狼の血』は、広島を舞台に、暴力団と警察の抗争を描いたハードボイルド小説で、第69回日本推理作家協会賞を受賞し、映画化もされました。この作品は、柚月の作品の中でも特に人気が高く、シリーズ化もされています。その他、佐方貞人シリーズや、『朽ちないサクラ』など、数々の作品が映像化されています。

人物像

柚月は、子どもの頃から男の世界を描いた物語を好む一方、トールペイントやソーイングなど、女性らしい趣味も持っています。また、自身のルーツである岩手への想いも強く、東日本大震災で実家が津波で流された経験も、その後の創作活動に大きな影響を与えています。尊敬する作家として、横山秀夫を挙げています。

受賞歴と作品リスト

柚月は、これまでに数々の文学賞を受賞しています。

2007年 - 『待ち人』で山新文学賞入選
2008年 - 『臨床真理』で第7回『[[このミステリーがすごい!』大賞]]受賞
2013年 - 『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞受賞
2016年 - 『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞受賞
2019年 - 『朽ちないサクラ』で第5回徳間文庫大賞受賞


主な作品リストは以下の通りです。

佐方貞人シリーズ：『最後の証人』、『検事の本懐』、『検事の死命』、『検事の信義』
「孤狼の血」シリーズ：『孤狼の血』、『凶犬の眼』、『暴虎の牙』
「サクラ」シリーズ:『朽ちないサクラ』,『月下のサクラ』
合理的にあり得ない:『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』,『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』
その他:『臨床真理』,『蟻の菜園〜アントガーデン〜』,『パレートの誤算』,『ウツボカズラの甘い息』,『あしたの君へ』,『慈雨』,『盤上の向日葵』,『ミカエルの鼓動』,『チョウセンアサガオの咲く夏』,『教誨』,『風に立つ』

映像化作品

柚月の作品は、映画、テレビドラマなど、多数映像化されています。

映画:『孤狼の血』,『孤狼の血 LEVEL2』,『朽ちないサクラ』
テレビドラマ: 佐方貞人シリーズ（『最後の証人』,『検事の死命』,『検事の本懐』,『検事・佐方〜裁きを望む〜』,『検事・佐方〜恨みを刻む〜』）,『盤上の向日葵』,『パレートの誤算』,『合理的にあり得ない〜探偵・上水流涼子の解明〜』


柚月裕子は、その鋭い視点と卓越した描写力で、読者を魅了し続ける、現代を代表する小説家の一人と言えるでしょう。

もう一度検索