柳川荒士

柳川荒士（やながわあらし、1975年 3月17日生まれ）は、日本のファッションデザイナー。自身のブランド「ジョンローレンスサリバン（JOHN LAWRENCE SULLIVAN）」の創設者であり、そのクリエイティブディレクターを務めている。異色の経歴の持ち主として知られ、ファッションデザイナーとなる前はプロボクサーとして活動していた。

ボクサーとしての歩み

柳川氏の競技人生は、元プロボクサーであった父の影響で、小学5年生からボクシングに打ち込み始めたことに始まる。アマチュア時代から類まれなる才能を発揮し、広島市立己斐上中学校を卒業後、崇徳高校に進学。高校ボクシング界で早くから頭角を現し、インターハイを制覇する輝かしい実績を挙げた。

中央大学に進学後もその実力は揺るぎなく、大学時代には国体や全日本選手権で優勝を飾り、アマチュア全日本フライ級チャンピオンに輝いた。1996年のアトランタオリンピックを目指し日本代表候補となるが、アジア予選で惜しくも敗退し、オリンピック出場は叶わなかった。

大学卒業後、元WBA世界ライトフライ級チャンピオンの具志堅用高氏にその才能を見出され、プロボクサーに転向する。1997年3月17日にプロデビュー。フライ級などを中心に、およそ4年間にわたりプロのリングで戦い続けた。プロキャリア最後の試合は2000年 10月19日、横浜文化体育館で行われたスーパーフライ級の日本ランカー対決。この試合で川嶋勝重選手にTKO負けを喫し、現役を引退した。

ボクシングキャリアには、大学時代のユニークなエピソードもある。当時アマチュア全日本チャンピオンでありながら、体育の授業でボクシングを選択した際に単位を落とし、それが一因で中央大学を中退したという話が伝えられている。これは、アマチュアトップアスリートとしての多忙な日々を物語る逸話と言えるだろう。

ファッションへの転身

プロボクシング引退後、柳川氏は以前から関心のあった洋服の世界へと新たな道を歩み始めた。まずは洋服販売の現場で経験を積み、ファッションビジネスの基礎を学ぶ。その後、強い憧れを抱いていたロンドンへ渡航。現地では古着の買い付けや販売を手がける傍ら、次第に自身で服をデザインすることへの興味を深めていった。特に、自身の肉体を通じて知るシルエットや構造への関心は、この時期に培われたと言える。

JOHN LAWRENCE SULLIVANの設立と国際的評価

ロンドンでの経験を経て、柳川荒士氏はデザイナーとして立つことを決意。2003-2004年秋冬シーズンに、自身の名を冠したファッションブランド「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」をスタートさせた。ブランド名は、自身のルーツであるボクシング界における伝説、初代ヘビー級チャンピオンのジョン・ローレンス・サリバンから名付けられている。ここには、ボクシングで培った力強さや不屈の精神をファッションで表現するという彼の思いが込められている。

「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」の特徴は、身体のラインを強調する構築的なテーラリングと、クールでエッジの効いたブリティッシュスタイルにある。元アスリートならではの視点から生み出される服は、単に身体を覆うだけでなく、着る者の内面的な強さや自信を引き出すデザインとして評価されている。

ブランド設立から数年で国内での評価を確立し、2006年秋には初の単独ファッションショーを開催。これが大きな反響を呼び、特にファッション感度の高い若者を中心に熱狂的な支持を集めた。その人気は日本国内に留まらず、国際的な舞台へと展開。2011年1月には、世界のファッションの中心であるパリ・コレクションに公式にデビューを果たした。これを機にブランドは国内外で揺るぎない地位を確立し、柳川荒士はデザイナーとしての評価を不動のものとした。

元プロボクサーという異色の背景を持つ柳川荒士氏は、ボクシングで培った精神力、集中力、そして研ぎ澄まされた感性をもってファッションと向き合っている。彼の生み出す力強くも洗練されたデザインは、これからも多くの人々を魅了し続けるだろう。

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