桑田二郎

桑田二郎：ヒーロー漫画から精神世界へ

桑田二郎（1935年4月17日 - 2020年7月2日）は、大阪府吹田市出身の日本の漫画家です。旧ペンネームは桑田次郎。シャープで美しい描線による絵柄で知られ、『まぼろし探偵』、『月光仮面』、『8マン』などの代表作があります。

生い立ちと初期の活動

幼少期から漫画に親しみ、手塚治虫の作品に影響を受けました。13歳で貸本漫画家としてデビューし、最年少記録を打ち立てます。家計を助けるために漫画を描き始めますが、苦しい生活の中で”死”について考えることもあったそうです。中学卒業後、広告代理店勤務を経て、再び漫画の世界へ。

独自の画風確立とヒーロー漫画の隆盛

手塚治虫の模倣から始まった絵柄に、絵物語やアメコミの影響が加わり、独自の画風を確立しました。1957年、『まぼろし探偵』の連載を開始し人気を博します。1958年にはテレビドラマ『月光仮面』のコミカライズを手がけ、ドラマ・漫画ともに大ヒット。掲載誌の部数を3倍に押し上げました。その後も『Xマン』など、マスクヒーローのバリエーション作品を多数発表しました。

苦悩と挫折、そして精神世界へ

しかし、仕事と夜遊びに明け暮れる生活の中で家庭は崩壊。再び自殺を考えるようになります。1963年からは『8マン』の連載を開始し、アニメ化もされて国民的な人気を獲得しますが、1965年に拳銃所持が発覚し逮捕。全ての連載が打ち切りとなります。この事件を機に漫画家生命が絶たれたと感じますが、周囲の支えもあり、半年後には連載を再開しました。

1970年代に入ると人気に陰りが見え始め、少年漫画の仕事から身を引きます。その後、生命そのものの意味について深く考えるようになり、綾瀬川の土手で見た朝日に”神”の存在を確信。瞑想を日課とし、神秘体験を重ねる中で般若心経に辿り着き、漫画化を思い立ちます。

般若心経漫画と晩年

経済的に困窮する中で『マンガエッセイでつづる 般若心経』を出版。これが爆発的な売れ行きとなり、自らの存在意義を見出しました。その後は観音経や日月神示などを題材に、宗教と精神世界を絡めた「マンガエッセイ」を20年以上に渡り描き続けました。

1980年代後半に茨城県に移住し、平穏な晩年を過ごしました。2020年7月2日、老衰のため逝去。享年85歳でした。

作風と人物

岡友彦に師事し、兄弟弟子に一峰大二がいます。アクション洋画のような人物・画面展開と、シャープな描線による格調高い画風が特徴です。手塚治虫と並び称されるほどの美しい描線を持っていました。

仏教を扱った著書を多数残していますが、特定の宗教団体には所属していません。自らが悟った”真理”を説明するための手段として仏教用語を用いたため、真摯な仏教徒からは否定的に捉えられることもありました。

桑田二郎は、ヒーロー漫画の第一人者として一時代を築きながらも、晩年は精神世界を探求し、独自の境地を切り開いた漫画家でした。その作品は、時代を超えて多くの人々に影響を与え続けています。

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