楊勇

楊勇：隋の初代皇帝、文帝の長男の生涯

楊勇（よう ゆう、生年不詳 - 604年）は、中国の隋の初代皇帝である文帝、楊堅の長男として生まれました。幼名は睍地伐（けんでいばつ）といい、皇太子に立てられましたが、後に廃位され、死後に房陵王として追封されました。

生涯

楊勇は、楊堅と独孤伽羅（後の独孤皇后）の間に生まれました。祖父である楊忠の軍功により、北周の時代に博平侯に封じられています。父の楊堅が北周の政権を掌握すると、楊勇は世子に立てられ、大将軍・左司衛に任じられ、長寧郡公に封じられました。その後、洛州総管・東京少冢宰として旧北斉の地を統轄し、上柱国・大司馬・領内史御正として禁衛のことを司りました。楊堅が禅譲を受けて隋を建国すると、楊勇は皇太子に立てられました。

楊勇は学問を好み、詩や賦を得意とし、性格は寛大で温厚であり、明克譲、姚察、陸開明らの文人を召し出して友としました。しかし、奢侈な生活を好み、礼節に欠ける面があったため、文帝はこれを快く思っていませんでした。また、多くの側妾を抱え、特に雲昭訓を寵愛し、正妃である元妃を顧みることがなかったため、元妃は病没しました。このことに独孤皇后は不満を抱き、楊勇を責めました。

次弟である晋王楊広（後の煬帝）は、母である独孤皇后が兄に対して不満を持っていることを知ると、側妾を持たず、蕭妃だけを愛しているように見せかけました。楊勇を嫌っていた独孤皇后は、次第に楊広の行いを賞賛するようになり、楊勇を太子から廃して、楊広を太子に立てようと考えるようになりました。文帝は楊素を派遣して楊勇の行いを観察させましたが、楊素は楊勇を故意に怒らせ、楊勇が怨嗟を抱いているという話をでっち上げ、文帝の猜疑心を深めました。皇后と楊広は人を介して楊勇に対する讒言を繰り返し、文帝も楊勇が逆恨みをしていると信じるようになりました。600年、文帝は楊勇を太子位から廃して庶人に落とし、楊広を太子に立てました。

当時、朝廷では楊勇が罪なくして廃されたという声もありましたが、文帝は聞き入れませんでした。楊勇もしばしば文帝に面会を求めましたが、楊素が楊勇はすでに心神喪失しており、癲鬼が憑いていて回復不能であると言って、文帝と楊勇の面会を阻止しました。

604年、文帝が仁寿宮で病に倒れた際、皇太子楊広が文帝の側室である宣華夫人に手を出そうとしたことがありました。宣華夫人がこのことを文帝に訴え、文帝は楊勇の冤罪を知り、独孤皇后と楊広のことを大いに罵り、人を派遣して楊勇を召し出そうとしました。しかし、そのことを察知した楊素が楊広に伝えると、間もなく文帝は死去しました。楊広は即位した後、文帝の遺詔と称して楊勇を自殺させ、3年後の607年には男子もことごとく殺害されました。その後、楊勇は房陵王に追封されました。

妻子

正室：太子妃元氏
側室：雲昭訓（3男あり）、高良娣（2男1女あり）、王良媛（2男あり）、成姫（1男あり）

楊勇には10人の息子と2人の娘がいました。

伝記資料

『隋書』巻四十五 列伝第十「文四子伝」
『北史』巻七十一 列伝第五十九「隋宗室諸王伝」

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