楊谷寺

柳谷観音 楊谷寺：歴史と美が織りなす癒やしの空間

京都府長岡京市、西山山麓に佇む柳谷観音（ようこくじ）。正式名称は楊谷寺（ようこくじ）で、西山浄土宗に属する寺院です。山号は立願山、本尊は十一面千手千眼観音菩薩。新西国三十三箇所第17番札所としても知られ、古くから多くの人々に信仰を集めてきました。

歴史：延鎮から空海、そして皇室との関わり

寺伝によれば、創建は平安時代初期、清水寺の開祖である延鎮（えんちん）が806年（大同元年）に遡ります。延鎮が夢のお告げにより十一面千手千眼観音菩薩像を感得し、この地に堂宇を建立したのが始まりと伝えられています。その後、延鎮が清水寺に戻った後も、空海が楊谷寺で修行を行ったという伝承も残されています。

特に有名なのが、空海と独鈷水（おこうずい）の逸話です。811年（弘仁2年）、楊谷寺を訪れた空海は、眼のつぶれた小猿を懸命に洗う親猿の姿を目にします。空海は17日間の祈祷を行い、満願の日に小猿の目は見事に回復。この湧き水を眼病に効く霊水として「独鈷水」と名付け、広く世に広めたとされています。

江戸時代には、霊元天皇が独鈷水で眼病を癒されたことから、歴代の天皇に献上されるようになり、明治時代までその献上は続きました。また、東山天皇の皇妃・新崇賢門院の祈願により中御門[[天皇]]が誕生した縁から、中御門[[天皇]]が本尊を模した観音像を奥之院に寄進したと伝えられています。

近年では、「花手水」の発祥の寺としても注目を集めています。2017年に楊谷寺で行われた花手水が、コロナ禍を経て全国的に広まりました。

見どころ：多様な文化財と美しい境内

楊谷寺境内には、多くの文化財が点在し、見どころが満載です。

本堂: 江戸時代前期の再建。京都府登録有形文化財。
庫裏: 江戸時代の再建。内部には書院も備わっています。京都府登録有形文化財。
独鈷水堂: 空海が霊水とした独鈷水が湧き出ます。京都府暫定登録有形文化財。
庭園「浄土苑」: 江戸時代中期の作庭。京都府指定名勝。
あじさい廻廊: 回廊の両側にあじさい園が広がり、特に紫陽花の季節は見事です。
奥之院: 1930年（昭和5年）再建。洛西観音霊場第10番札所。
弁天堂: 淀殿弁財天が祀られています。淀殿ゆかりの湧き水も残されています。
阿弥陀堂: 江戸時代の建立。元々は豊臣家の淀殿が本堂の本尊のために寄進した厨子があったと伝えられています。京都府暫定登録有形文化財。

その他にも、眼力稲荷社、十三重石塔、山門など、数多くの建造物や仏像が境内を彩ります。数多くの京都府指定・登録有形文化財、暫定登録有形文化財、名勝に指定されている建造物、庭園を有しています。

アクセスと拝観

最寄りの駅からはタクシーが便利です。阪急電鉄京都本線西山天王山駅、長岡天神駅、JR京都線長岡京駅西口からそれぞれタクシーで10～15分。バスを利用することも可能です。毎月17日の縁日には、西山天王山駅東口およびJR長岡京駅西口から送迎シャトルバスも運行されています。

拝観料は通常期500円、新緑・紫陽花・紅葉シーズンは700円です。上書院は別途拝観料が必要です。

楊谷寺と周辺

楊谷寺は、善峯寺、光明寺と共に「西山三山」と呼ばれ、豊かな自然に囲まれた霊場として知られています。これらの寺院を巡るのもおすすめです。かつては多くの参拝客で賑わい、1975年まで高槻市交通部が市営バスを運行していたほどでした。

古くからの歴史と美しい自然、そして現代の感性を融合させた楊谷寺は、心静かに過ごしたい方、美しい風景を堪能したい方にとって、最適な場所と言えるでしょう。

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