楠本柊生

楠本 柊生

楠本 柊生（くすもと しゅうせい、1972年1月5日 - 2021年11月29日）は、愛知県名古屋市出身の日本の演出家、脚本家、劇作家、そして俳優でした。株式会社XIVジャパン・エンターテイメントの代表取締役も務めていました。彼の演出スタイルは、出演者それぞれの持ち味を最大限に活かすことに長けており、また、張り巡らされた多数の伏線が物語の終盤で見事に一つに繋がる、パズルのような緻密な構成に定評がありました。

楠本氏は、自身が主宰する劇団「第14帝國」での活動において、「楠本柊生帝國元帥（くすもと しゅうせい ていこく げんすい）」という名義を用いていたことから、多くのファンや関係者から「元帥（げんすい）」という愛称で親しまれていました。身長は171cm、血液型はA型でした。

1991年、「第14帝國」を立ち上げて以降、劇団のほぼ全ての公演で、演出、脚本、そして主演という三役を一人で担い続けました。劇団「第14帝國」は、精神世界に存在する架空の国家というユニークな設定を持っており、出演者は全員が軍服に身を包んだ男性キャストで構成されていました。公演は「式典」と呼ばれ、出演者は「リッター（軍人）」、観客は「臣民」と呼ばるなど、独自の呼称が用いられました。公演内容は、シリアスな展開に、トークコーナーやギャグを巧みに織り交ぜ、それらが最終的に一つの物語として収束する構成が特徴的でした。

劇団活動と並行して、1999年からはソロ活動「楠本柊生帝國元帥LIVE」を開始。一人芝居など、精力的に個人の表現活動も展開しました。メディアへの進出も積極的に行い、2002年にはCBCラジオで冠番組「週刊ゲンスイ」（当初は「週刊第14帝國」）がスタート。メインパーソナリティとして7年間を務め、雑学に長けた地域密着型の内容に加え、ヴィジュアル系アーティストから落語家、歌舞伎役者まで、幅広い分野から楠本氏と親交のある多彩なゲストが登場し、人気を博しました。

他分野のアーティストとのコラボレーションも活発に行いました。2002年にはヴィジュアル系バンドPsycho le Cemuとの共同企画を行い、以降、彼らのライブパフォーマンスの脚本を手掛け、自身もゲスト出演しました。また、同年には雑誌連載をきっかけに、グルグル映畫館の天野鳶丸とユニット「元帥・鳶丸の宇宙と恐竜（通称：元鳶）」を結成し、全国ツアーを行っています。

2003年、渋谷公会堂で行われた「ライヒス・リッターVol.25〜となりの元帥〜FINAL」は、インディーズでの公演ながらチケットが即日完売するほどの成功を収めました。この公演では、ザ・ドリフターズの伝統的な芸である盆回し（回り舞台）を本番中に回し続け、渋谷公会堂における一公演での最多回転数を記録しています。これに際し、舞台装置の故障等が発生しても会場側に責任を問わない旨の誓約書を事前に提出したというエピソードも残っています。

2005年には、俳優、ミュージシャン、落語家、プロレスラーなど、ジャンルの壁を超えた出演者によるコラボレーション・ロックミュージカル「アラジンとスターオーシャンの秘宝（通称：アラスタ）」を開催し、異色の才能を結集させました。

NHK教育テレビ（現Eテレ）「天才てれびくんMAX」への貢献も見逃せません。2006年度の年間ドラマ『新ユゲデール物語』にレギュラー出演したほか、同番組の舞台にも俳優として出演し、2007年の舞台「ボリボリ大サーカスの奇跡〜約束の場所へ〜」では出演に加えて演出・脚本も担当しました。この舞台では、中央の巨大LEDスクリーンと舞台上の出演者を自在に行き来させる革新的な演出を試み、予算が大幅に超過したという逸話もあります。また、2008年には同番組の年間脚本『日付変更船プッカリーノ』を手掛けました。当時てれび戦士だった子供たちの中には、後に「第14帝國」のリッターとして楠本氏の作品に参加する者も現れました。

ハロープロジェクトとの関わりもあり、2008年には劇団ゲキハロ第5回公演「Berryz工房 VS Berryz工房」の演出、脚本、そして本人役での出演を務めています。

晩年は闘病生活を送りました。2019年1月に大動脈解離を発症。2021年11月18日には、その予後悪化と大動脈弁閉鎖不全症の併発により手術を受け、術後の経過は一時良好で、Twitterでの投稿も再開していましたが、11月23日にうっ血性心不全の兆候が見られ退院を見送った後、同年11月29日に永眠しました。享年49歳でした。逝去の報は、12月2日に関係者を通じて公表されました。通夜と葬儀は近親者と劇団関係者により執り行われました。

没後の2022年1月5日には、第14帝國のメンバー主導による追悼イベント「会いに行ける元帥」が開催され、多くのファンが集まり、故人を偲びました。このイベントの模様は後にライブDVDとして発売されています。

また、熱心な愛煙家であり、特にキャメルマイルドを愛用していましたが、東日本大震災の影響で銘柄が廃盤になった際には、その困惑を自身の媒体で率直に綴っています。

ビデオ、DVD、CD、インターネット番組、雑誌連載など、多岐にわたるメディアで精力的に活動し、数多くの作品を発表しました。PlayStation 3用ゲームソフト「龍が如く4 伝説を継ぐもの」では声優としても参加するなど、その活動の幅は広大でした。

唯一無二の世界観と、関わる人々の才能を引き出す手腕を持った楠本柊生氏は、短い生涯ながらも日本の演劇界、そしてエンターテイメント界に大きな足跡を残しました。

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