極東とは
極東(Far East)とは、主に
ヨーロッパから見て最も東に位置する地域のことを指します。狭義においては東
アジアの国々や
シベリアの東部を含む領域ですが、広義には東南
アジアまでを含めることもあります。
地政学上の極東
歴史的には、
アジアは
インドを中心に発展してきました。そのため、地政学や
国際政治学における地理区分は
インドを基準に行われ、
ヨーロッパから見ると
インドよりも遠方にあたる地域が極東と名付けられました。一方、
インドに近い地域は「
中近東(Near and Middle East)」として知られていました。
20世紀に入ると、これらの地域は「極東」、「
中東」、「近東」という三つのカテゴリーに分けられるようになりました。極東は
列強国が争奪戦を繰り広げる領域、対して
中東は
イギリスの
インドへのアクセスを維持するための重要な地域、そして近東は東方問題に関連する地域として概念化されました。ただし、第二次世界大戦後の
中東と近東の範囲は、戦前の定義とは大きく異なります。
1941年12月15日には、内閣情報局が「極東」という語句に対して、「
イギリスを中心とした世界観に基づくものである」との認識から、さまざまな
公文書や報道から極東の語を排除する提案を行いました。その結果、日本におけるこの用語の使用頻度は戦時中に大きく減少しました。さらに、戦後には
中近東の呼称も徐々に廃れていき、多くの資料においては「
中東」という名称に統一されています。
日米安全保障条約における極東
日米安全保障条約の第6条では、極東地域における国際的平和と安全を維持するため、米軍が在日米軍施設を利用できる条項が含まれています。この条項によれば、日本政府は「ほぼ
フィリピン以北、日本及びその周辺地域」を極東と解釈しています。この解釈に基づく周辺地域には、日本や
韓国、台湾、
フィリピン、パラオなどが含まれると考えられています。しかし、台湾の領有権を主張する中国は、この条約の台湾適用に対して反発しています。
ロシアにおいては、
ウラル山脈によって
ヨーロッパと北
アジアが分けられており、北
アジアのうち
ベーリング海周辺の地域が「極東
ロシア」と呼ばれています。現代の行政区分では、
ロシア極東には「極東連邦管区」が設けられ、その本部は
ハバロフスクに所在しています。この管区の人口は約716万人で、
ロシア全体の4.9%を占め、面積は全土の36%にも達します。
軍事面では、極東には極東軍管区が存在しており、これが現在の東部軍管区とは一部重複しています。また、1920年から1922年には「極東共和国」という存在もありましたが、その範囲は極東連邦管区の定義とは異なっていました。
ロシアにおいて極東を指す場合、「極東(Дальний Восток)」という用語が使用されますが、誤解を避けるために「
アジア太平洋地域」や「東
アジア」という表現を用いることもあります。
結論
極東はその名称に多様な歴史的および地理的な背景があり、地域の定義や国際的な枠組みは時代と共に変化してきました。このような歴史を踏まえて、極東に対する理解を深めることは、今日の国際情勢において極めて重要なテーマです。